犬は鼻の良い動物だ。その嗅覚は、人間の1億倍とまで言われている。もっとも、人間は動物の中だとあまり嗅覚が鋭い方ではない。視覚を中心にして情報を得るように進化した結果、匂いへの鋭敏さは失われてしまったようだ。犬にも個体差やにおいの種類による得手不得手はあるのだが、条件さえ良ければ8km離れた場所からでもにおいを嗅ぎ分けるらしい。


彼らはその嗅覚と知能の高さを活かして、警察犬や麻薬探知犬として犯罪者を取り締まる手助けもしている。人民日報によれば、中国では警察犬に360度カメラを取り付けているという。


警察犬+360度カメラ



360度カメラを警察犬に装備させているのは、北京の警察だ。世界で初めて準備された「犬用360度カメラ」は周囲10メートルをパノラマ撮影し、Wi-Fi経由でリアルタイムに映像の送信を行うという。このカメラがあれば、警察官が警察犬と離れていても彼らの視界を共有できることになる。


警察官のWang Leiは、「VRグラスがあれば、現場にいなくても犬の視界を使って職務を遂行できます」と話す。


15頭の警察犬に、最初の360度カメラが装備されている。


北京警察のCTO、Wang Huaiyingによれば、彼らが装備している360度カメラの外見は卵に似ており、重さはわずか155グラムしかない。さらに、壊れにくくて防水性も高い素材で作られているという。


内蔵ストレージは約30GBで、一度の充電で連続6時間の駆動を実現している。Wangは今後のアップデートでメモリ容量が50GBに拡大され、8昼夜の録画が可能になると語った。


この最新機器を装備された警察犬は、訓練を受けてその扱いに慣れたという。もちろん彼らがビデオカメラを操作するわけではなく、走ったり座ったりといった動作をしてもカメラを安定させていられるようになったという意味だ。


現在、彼らはカメラを装備して麻薬対策、安全保障、爆発物の探知といった役割に就いている。


カメラを付ける意義


卵には似ていない気がする


これまでにも、人間や動物の身体に付けられるカメラは作られてきた。人間の場合は、サーフィンやスカイダイビングのようなスポーツをするときにどのような視点になるのかを伝える目的で使われることが多いだろうか。プロのスポーツ選手の視点を体験するのは、ウェアラブルカメラなしでは考えられなかったことだ。


ペットにカメラを付けるのは一般的ではないが、野生動物にはときどきカメラを付ける実験が行われることがある。ただ、多くの場合は大したものが写っていなかったり、途中でカメラが振り落とされてしまったりとあまり芳しい成果は上がっていない。野生動物はカメラマンとしての訓練を受けていないので、当たり前である。


動物の生態を調査するための実験では、あまり彼らに干渉できない。観察者が関わったことで野生の生活を変えてしまっては、調査の意味がないからだ。だが、警察犬ならばカメラを装備した状態で動くための訓練を行うこともできる。実際に、訓練を行ってカメラを安定させておくことができるようになったという。


人民日報の記事では「犬の視界を警察官が利用する」という用途が紹介されていたが、この用途においてそれ以上に重要なのは見た内容を記録できるという点だろう。犬が犯人の顔を覚えて証言することはできないが、記録映像があれば動かぬ証拠になる。


360度カメラならば全方向の映像を記録できるため、後から映像を見返すことで現場では気づかなかった新事実が発覚するということもあるはずだ。操作の基本としてカメラを装備した警察犬を連れていくようになってもおかしくはない。


カメラによるマイナス点



警察犬にカメラを付けさせることには意味あるが、それによる悪影響がないわけではない。これは、彼らが従事している役割が麻薬対策、安全保障、爆発物の探知などと書かれていることからも想像できる。


上記のような役目では、激しく動き回るよりも決められた場所で荷物ややってくる人に対応していくことが多い。こうした内容ならばカメラが邪魔になることはあまりないだろう。また、Wi-Fiによる通信も安定して使えるはずだ。


だが、野外では事情が違ってくる。においを頼りに行方不明になった人を探すような場合、Wi-Fiが届かない場所も多いはずだ。都市部ではなく農村部であれば、狭いところをくぐり抜けたり茂みの中を探したりという機会も多く、カメラ自体が邪魔になることもありそうだ。


カメラは警察犬に新しい能力を与えてくれる代わりに、犬ならではの長所を一部潰してしまう面もある。どういったときに使うのかを考える必要がありそうだ。360度カメラではなく、一般的なカメラの方がバッテリーの持続時間やサイズの面で向いている場面も考えられる。


 


警察犬に360度カメラを装備させるという発想自体は悪くない。彼らに任せる役割をきちんと考えれば、これまで以上の活躍をしてくれるだろう。


少し気になるのは、この最新デバイスのスペックだろうか。現在は30GBのストレージと6時間のバッテリー容量しかないにもかかわらず、将来的には50GBのストレージと8昼夜のバッテリーとされている。


バッテリーを現在の30倍程度まで大きくする必要がある上に、記録容量が足りないのではないだろうか。近い将来の予定ではなく、技術革新が起きればそうしたいという希望なのかもしれない。


 


参照元サイト名:人民日報

URL:http://en.people.cn/n3/2017/0313/c90000-9189661.html


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 中国ではVRカメラを装備した警察犬が犯罪を見逃がさない