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Fraunhoferがあらゆる端末で複雑な3Dデータの表示を可能にする「Instant3DHub」の情報を発表した。このソフトウェアで、Fraunhoferの研究者たちは「あらゆるデータをあらゆるデバイスで」という目標に一歩近づいたと言える。
取引先に書類や写真のデータを送る場合、デファクトスタンダードとなっているファイル形式がある。その形式を使えば相手の使っているOSを意識する必要がない。異なるOSを搭載したコンピュータやタブレット端末でデータを表示したい場合も同様だ。
書類ならばPDF、写真ならばJPGやPNGといった形式に変換するのが一般的だ。DOCX形式(Microsoft Word)やAI形式(Adobe Illustrator)でも良いが、互換ソフトで表示している場合はレイアウトが崩れたり、最悪開けなかったりする。やはり特定の有料ソフトウェアを必要としない標準的な形式で送信するべきだ。
では、3Dデータを送信したいときにはどうすべきなのだろうか。
これは工業に限ったことではないが、3Dデータをやり取りする上でのデファクトスタンダードと呼べる形式はまだない。にもかかわらず、工業で使われる3Dデータはどんどん巨大化・複雑化している。
高度なものではVRヘッドセット、手軽なものではスマートフォンまで、様々な機器で3Dデータを利用する機会がある。だが、それらの機器で共通して利用できるデータ形式が存在していないのだ。
Fraunhoferで研究を続けるベール博士は、「データを収集する技術ばかりが発展して、利用するための技術が追いついていないのです」と語っている。
こうした問題の解決策としてFraunhoferが提供するのが、instant3DHubだ。このソフトウェアは、専用の機器以外からでも3Dデータを扱うことを可能にする。特別な設備がある研究施設に戻らずとも、エンジニアや組立技術者が現場でデータを確認できるようになる。
ベール博士によれば、「プラントやデジタル構造をリアルタイムに検査し、現状を理解できる」という。
複雑な3Dデータは膨大なため、こうしたシステムを提供するのは不可能か、可能としても難しいものだった。たとえ実現したとしても、利用するユーザにとって手間のかかるものだった。
建築物や製品の内部にある見えない部分に関しても3Dデータは存在している。その中からユーザが見えている部品を選ばなくてはならなかったからだ。何百万もの部品データを小型の端末で処理することはできないため、事前に必要なパーツを選んで表示用のデータを作成する必要がある。しかも、その処理には専用の高価なソフトウェアを使っていた。
Fraunhoferが変えたのは、この処理である。同社の技術では、ソフトウェアが自動的に見えている部分のデータのみを選択してくれる。ある発電施設は350万もの部品からなるが、実際にサーバからデバイスへと送信される部品データを3,000程度にまで削減できるという。
ベール博士によれば、この方式は特にVRやARで有用だ。VRヘッドセットは(各社が提供するフレーム落ち補正技術に頼らない場合)毎秒120フレームという大量の画像を必要とする。
これまで、膨大なデータ量を120FPSに対応できる速度で処理するのは困難だった。しかし、instant3DHubならばこの問題に対処できる。サーバとのやり取りを効率化したことで、クライアントに求められる要件を下げることに成功した。これはVRヘッドセット以外で3Dデータを処理する場合も同様である。
ARでは、カメラやセンサーが認識した外部の状況に3Dデータを重ねて表示する必要がある。しかも、ARグラスやスマートフォン、タブレットといったARの技術が期待される端末は通常小型である。もちろん、ゲーミングPCのような処理能力は望めない。
こういったハードウェア面の弱さを、instant3DHubは補える。ARはインダストリー4.0において重要な役割を果たす技術だ。instant3Dはインダストリー4.0を支えるソフトウェアとしても期待されている。
参照元サイト名:Fraunhofer
URL:https://www.fraunhofer.de/en/press/research-news/2017/february/complex-3d-data-on-all-devices.html
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