ARアプリで相手の寿命が表示される


人間の寿命が目に見えるという設定はフィクションではありふれたものだが、もしも本当に人の余命を知ることができたらどうなるのだろうか?


「死を思う」ことで毎日を大切に生きることができるようになるのかもしれない。自分がいつ頃死ぬかが分かっていれば、時間を無駄にしようとは思わないだろう。良い面がある一方で、生命保険などは今のシステムのまま続けていくことができなくなると思われる。


そんな想像をしたくなるiOS用アプリが開発された。


Death Maskで余命を知る



AppleのiOSに搭載されたARプラットフォーム、ARKitを使って開発された「Death Mask」。このアプリの機能は単純明快、カメラを向けた相手の余命を知ることができるというものだ。余命を知りたい相手の顔が入るようにカメラを向ければ、ARKitによって顔が認識され、画面に余命がAR表示される。


顔から余命を知る


顔を認識して余命を表示するといっても、Death Maskは相手の人相で占いをしているわけではない。海外メディアUpload VRに対してデベロッパーのOr Fleisherが伝えたところによれば、予測はAgeNetと呼ばれる機械学習モデルに基づいて行われているという。


Fleisherは、人物の顔を細かなパーツに分解し、年齢を知るために利用しているのだと説明している。おそらく、AgeNetでは顔のパーツから現在の年齢を推定し、その年令を平均的な寿命から減算することで余命をはじき出しているのだろう。


この方法ならば(顔が)若い人ほど余命が長く、年を取った人ほど短い余命が表示される。そのため、違和感のある結果になることは少ないと思われる。


顔からどこまで分かる?


顔を認識して情報をAR表示する(Blippar)


Death MaskではARKitを使うことでカメラが捉えた人物の顔から年齢を推定し、おそらく平均的な寿命と現在の年齢との差を余命として表示している。また、レポートによれば性別も判断されているので余命の計算時に考慮されていそうだ。


だが、人間の顔と結びつくさらに多くの情報を表示することも可能だ。


個人の特定


大きなポイントとなるのが、個人の特定だ。AppleのiPhoneに搭載されたFace IDの例でも分かるように、機械は人間の顔を見て同一人物を識別することができる。もっとも、現在のARKitやその他のARプラットフォームの精度では正確に個人を特定するのは難しい。


しかし、センサー精度の向上に加えて各種データの活用(撮影された時間と場所からその人物が居る可能性を判断する、服装や声もヒントになる)で認識精度は高まっていくはずだ。個人を識別可能になればその人物に関連する情報をインターネット上で検索することもできる。有名人や実名で登録しているユーザであればSNSアカウントを表示することもできそうだ。


プライバシーの問題


街で見かけた女性のプロフィールをアプリで確認する(Flirtar)


ユーザがあらかじめ登録している情報であれば、アプリを使って相手から見られても何の問題もない。だが、顔を撮影されただけで様々な情報を知られてしまうとなるとプライバシーの保護が問題となる可能性がある。


健康状態が分かる


Death Maskは相手の顔から年齢を推定することで余命を表示するという、実用ツールというよりも遊びのためのアプリだ。だが、ARアプリで撮影することで相手の健康状態まで確認できるようになれば事情が変わるかもしれない。本当に余命が計算できてしまうことすら考えられる。


ちょうど遺伝情報の提供が不安視されているのと同じように、現在は健康であるにも関わらず「統計的に健康状態が悪化しやすい兆候が出ている」という理由で保険の加入や就職で不利になったり、健康食品の販売者に目をつけられたりするかもしれない。


医療従事者や身近な人ならばARアプリを使わなくても外見から体調の変化を察することができるものだが、アプリによって誰にでも見えるようになってしまうと問題がありそうだ。


知られたくないことが分かる


また、インターネットの広がりによって忘れられることが難しくなっている。


顔から個人が特定できるようになった場合、過去に関わった事件や勤務先などの隠している情報が暴露されてしまうかもしれない。ARアプリを使わなくても知られてしまう可能性があるものだが、誰でも簡単に見られるとなると厄介なトラブルを巻き起こすこともありそうだ。


Google Glassのトラブル再び?


かつてGoogleが販売していたスマートグラス、Google Glassは隠し撮りの不安などプライバシーへの配慮を求める声を受けて開発が一時中断されてしまった(現在はエンタープライズ用途でリブートされている)。


顔認識技術とARを組み合わせることで「Blippar」や「Flirtar」を使った便利な生活が可能になることは歓迎できるが、対象の健康状態や詳細なプロフィールなどを誰もが見られるようになってしまうと各所で無用なトラブルが起きるかもしれない。


社会問題となるとARアプリやスマートフォンの使用が制限されることも考えられるので、プライバシーには十分な配慮が必要だ。過去のARデバイスと同じ轍を踏むことがないよう、ソフト面・ハード面とも慎重に開発を進めなければならない。


 


参照元サイト:Upload VR

参照元サイト:YouTube


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 ARKitを使った「Death Mask」アプリで相手の余命が目に見える?