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2024年10月15日、日本電気株式会社の海外現地法人であるNECインドネシアと、インドネシア最大級の不動産都市開発会社Sinar Mas LandのIT子会社PT Samakta Mitra(サマクタ・ミトラ)は、適応ファイナンスの普及に向けた戦略的パートナーシップに関する覚書を締結しました。この取り組みは、気候変動による自然災害のリスクを軽減するための重要なステップとなります。この記事では、今回の協業の意義や具体的な取り組みについて詳しく探っていきます。
適応ファイナンスは、気候変動の影響を減少させるための適応策を導入する際に必要な資金を調達する手法の一つです。具体的には、保険、債券、融資などの金融商品を通じて企業や自治体、政府がその適応策を実現するための支援を行います。気候変動に伴う災害リスクを評価するためには、IoTやAIなどのデジタル技術が不可欠とされており、その活用が期待されています。
近年、自然災害が世界中で多発し、それによる影響が企業や自治体の事業活動に深刻な影響を及ぼしています。特にインドネシアでは、洪水、地震、熱帯低気圧といった自然災害が頻発しており、企業や自治体はこれらのリスクを軽減するための適応策を必要としています。しかし、適応策の導入には時間がかかり、公的資金に依存せざるを得ない状況が続いています。
このような背景の中で、NECは国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)において、適応策のROI(投資収益率)を提示し、民間資金の流入を図る取り組みを発表しました。さらに、今回のNECインドネシアとSinar Mas Landの覚書締結により、実際のビジネス環境においてもこの目的を達成しようとしています。
NECインドネシアとサマクタ・ミトラは、今回の協業を通じて、自然災害リスクの調査と防災対策の適応価値を可視化するソリューションの開発を進めます。具体的には、デジタルツイン技術やシミュレーションを活用し、自然災害による経済的な影響や環境影響を予測することを目指します。また、その結果を基に、民間企業が適応策を導入する際の金融ニーズに対して、保険会社、銀行、投資会社がより効果的な金融商品の提供を行うユースケースを創出します。このような取り組みにより、民間資金の流入が促進され、地域社会の強靭な発展に寄与することが期待されています。
NECインドネシアの社長、山本譲司は、「今回の協業は、適応ファイナンスの普及に向けた重要な第一歩です。NECのテクノロジーとソリューションは、さまざまな分野に活用でき、今後、シナルマス・ランドとの提携により、インドネシアにおける気候変動の影響低減に貢献することを期待しています」と述べています。一方、シナルマス・ランドのCEOであるイルファン・ヤスニは、「適応ファイナンスは、気候変動による災害リスクに対する最適な手段です。共同研究を通じて、さまざまな解決策を提案していくことが重要」とコメントしています。これにより、気候変動への適応とそのための金融手段が密接に連携することが期待されています。
NECインドネシアとSinar Mas Landの共同研究は、気候変動に対する適応策を業界全体で進めるための重要な取り組みです。新たな金融商品やテクノロジーの活用により、企業や自治体のリスク管理が一層進化し、持続可能な社会の実現に寄与することが期待されます。今後、この協業を通じてインドネシアにおける適応ファイナンスの普及が加速し、より強固な地域社会の構築に繋がることを期待しています。
執筆:熊谷仁樹