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私も引き取ることができないのだけどどうしたらいいか」
こういった相談を私はいままで何度も受けてきました。
やはり、前もって犬の引き取り先を決めておくことはとても大事なことだと思います。
ご自分がまだ元気で、余裕のあるうちから考えておかれたほうがいいでしょう。
自分以外のだれかに犬を飼ってもらう場合、まずは身内から考える方が多いようです。
お子さんや親戚の方で、自分が犬の面倒をみれなくなったときに、代わりに飼ってもらえるよう頼んでおくというのは一番多いケースではないでしょうか?
その場合、あらかじめ時々は犬に会って遊んでもらい、犬に慣れておいてもらうと、あとあと飼育が楽になります。
また、犬を飼うのにはお金もかかります。
犬を飼ってあげてもいいけど、あまりお金はかけられないといった方も多くいらっしゃいます。
身内であってもお金の問題はシビアなので、費用をどうするかはあらかじめしっかり話し合っておきたいところです。
特に高齢犬の場合、心臓病などのお薬を毎日飲んでいる子もいます。
犬を飼うことになった方の中には、薬の費用が負担に感じられる方も多いのです。
そういう場合も考えて、犬の余生にかかる費用は、飼い主があらかじめ準備しておく必要があるかもしれません。
家族のだれかが犬を引き取ってくれれば一番いいのですが、それができない場合もありますね。
ここで一つ、私が経験したことをお話します。
高齢の小型犬を飼育していた一人暮らしの女性の例です。
その方には息子さんがいて、もしお母さんになにかあれば自分が犬を引き取ると言っていました。
それで、お母さんも安心して犬と暮らしていたのですが、ある日、脳梗塞で倒れてしまい入院することになったのです。
もう、犬の世話は難しいといった状態でした。
犬は息子さんがすぐに引き取って世話をしてくれました。
ところが、数日して私のところに相談にこられたのです。
その息子さんは犬が大好きだったので、飼うのも全く抵抗はなかったのですが、配偶者の奥様がどうしても犬が苦手で飼えないということだったのです。
このように、お子さんに飼ってもらう約束をしていても、お子さんのライフスタイルの変化のため、約束が果たせなくなってしまうこともあります。
そういう場合も考えて、家族以外の民間の施設で、犬を世話してもらえるところを探しておいたほうがいいと思うのです。
実際先ほどの息子さんも、老犬ホームをみつけてそこで犬を預かってもらうことにしました。
ただ、すぐに見つかったわけではないので、それまでは少し苦労したようです。
このことからも、犬を終生面倒みてくれる施設をあらかじめ探しておくことは、自分になにかあった場合に、残された家族や犬のために重要だと思います。
犬が飼えなくなってしまった知人から、犬を引き取り飼育を始めた方がいました。
しかし、10日ほどすると、この犬は飼うのが難しいと言って相談にこられたのです。
前の飼い主はトイレのしつけもしていなかったので、どこでも排尿をしてしまい、人を噛んでくるし、ケージに入れると吠え続けるとのことでした。
犬好きの方でも、これでは飼育が難しいと感じてしまうのも無理はありません。
やはり、しつけは大事です。
日頃からケージに慣れさせておくこと、人に対して極端に警戒心を抱かせないようにしておくことなどは、誰かに犬を預かってもらうことを考えると重要ではないでしょうか。
また、しつけられた犬は環境の変化にスムーズに対応しやすくなり、犬のストレス軽減にもつながります。
犬がまだ元気なうちから、自分以外の誰かに飼ってもらっても大丈夫なように、しつけを意識してみてください。
今現在高齢犬を飼っている飼い主さんには、犬が重い病気にかかってしまった場合に、どこまで治療を施すかをあらかじめ考えておくことをおすすめします。
完治が難しくいわゆる延命治療となった場合に、どこまで治療を望まれるかは飼い主さんによって違ってきます。
延命治療は犬が自分の口から食事を摂れるまでにしたい、といった方や、とにかく最後まで点滴をして延命させたいといった方まで、飼い主によって考えもさまざまです。
獣医師は飼い主の意向をききながら対処していくことになります。
飼い主さんが一人暮らしの方なら、その方の考えですすめていけばいいのですが、ほかにも家族がいる場合には意見が分かれることもあります。
入院はかわいそうという人や、ここは思い切って手術して入院させようと、大きく意見が分かれてしまうこともあります。
高齢犬は数日のうちに具合が悪くなることも少なくありません。
どこまで治療するのか、家族間で話しあっておくことは大切です。
まずは、自宅で看取りたいのかどうかだけでも決めておいたほうがいいと思います。
なぜなら、高齢犬を動物病院で入院させる場合には、自宅で看取れなくなってしまう可能性が常にあるからです。
病院で預かっている最中に容体が急変して亡くなってしまう可能性はゼロではありません。
犬の性格を考えて、病院に預けるのはかわいそうだからやめよう、と決める方もいます。
また、ご自身の性格上、最後までやってやらないと悔いが残るので、入院させてでも点滴延命を望まれる方もいます。
どういう方向でいくのか、家族間で話し合っておくと、急な病気で動物病院に行ったときにも、獣医師からの提案に判断しやすくなるかもしれません。
このことは、犬が亡くなった場合に飼い主が受ける心のダメージに影響すると思うので、しっかりと考えておいてもらいたいところです。
人では終活の一環として、「エンディングノート」を作成する人が増えています。
残された家族が困らないように、自分が所有している財産についての情報を書いたり、家族への感謝の想いを書いたりと内容は人それぞれのようです。
ここでは、「犬のためのエンディングノート」を作成する場合、どんなことを書いたらいいかを例としてあげておきます。
犬を飼育してしている人に、犬を飼って大変だなと思うことを聞いたアンケートがあります。
常に上位に入っている回答が、「旅行に行きづらい」というものでした。
確かに、犬を飼うと家族揃って泊まりで出かけづらいですね。
最近はペットホテルに犬を預けて旅行も頻繁に行っている方もいます。
しかし、私は犬を飼ったからには犬との時間をなるべく多くとって欲しいと思っています。
犬は猫と違いそれを望んでいるようにも感じるからです。
時間=命ですね。
飼い主さんの時間を可能な限り犬と共有することは、犬をたくさんかわいがったことになると思うのです。
特別なことは何もする必要はなく、ただ犬と一緒にいればいいのではないでしょうか?
このことは犬にも飼い主にも満足感をもたらし、犬が亡くなったあとの悔いを減らせると思います。
犬は人と比べて寿命が短いですね。
病気が見つかると、その進行も人より早い場合がほとんどです。
また、飼い主に急な不幸が起こることもあります。
その場合は短い期間にいろいろ決めなくてはならなくなることも多いのです。
このような明るくない話を避けたいという気持ちはわかりますが、必ずやってくることなので、今のうちから向き合っておくことです。
もっと早くから準備しておけばよかった、という声をよくききます。
犬の終活は飼い主さんの終活です。
犬のため、ではありますが、そのためにお金を貯蓄しておくことや、犬を世話してくれる人、施設をみつけておくことは、飼い主さんの安心にもつながるのではないでしょうか。
犬が亡くなったあとに、重いペットロスになられる方がいます。
どんなにかわいがってあげた人でも、犬がなくなると多少の悔いが残るようです。
それでも、犬との別れに際し、十分に準備した人はその悔いが緩和されるように思います。
犬やご自身がまだ元気なうちにしっかり考え、準備しておくといいと思い今回お話させていただきました。