ツイッターユーザー「木材/Moku16」さんが投稿した一枚の画像。そこには見慣れない記号のようなものがズラリと並んでいますが……実はこれ、だれもが確実に日常的に目にしている文字をピクセルドット調にしたものなんです。

 落ち着いてもう一度見てみれば、あなたにもきっと読めるはずですよ。

 いかがでしょうか。そう、これらひとつひとつは「ひらがな」を5×5という極小のキャンバスかつ、「田」の交点を結ぶ形にしか点を打てないという縛りのもと書かれた文字。

 これを踏まえると、「くらいよる ふたりでへやをぬけだして うみべのまちで かたらおう ここにはだれも いないのだから」という文章になっていることが分かるはず。これだけのわずかなマスの中で、ひらがなが表現できるなんて驚きですよね。

■ 7×7マスから5×5マスへ 様々な工夫が盛り込まれたひらがな文字

 普段からイラスト制作や、作曲・フォント制作などの創作活動を行っている木材さん。ツイッターにて偶然見かけたピクセルフォントを見て、自分でも作りたくなったことが今作が生まれるきっかけでした。

 初めのうちは7×7マスで試作していたそうですが、もう少し小さなサイズで作ることはできないだろうかと考え、5×5マスで再作成。文章を作れるくらいの完成度に仕上がってきたものの、今現在もより良い表現を模索中であるとのこと。

 限られたマスの中で文字を作るのは、一見すると簡単なようにも見えますが、実は様々な工夫が盛り込まれています。

 もう一度文字をよく見てみると、「う」や「ら」といった表現しやすい文字についてはほぼそのままの形で落とし込まれていますが、「ぬ」や「な」など複雑なつくりの文字は、同じようには行きません。

 こうした文字は「そのある仮名をその仮名らしく見せている要素を抽出して、なんとかマスに収まるように作っている」のだとか。制約があることはたしかに不自由ですが、だからこそ記号のような統一感があり、面白味のあるフォントになっているのでしょう。

■ 前後の文章から文字を判読できるのは不思議な感覚

 また、この文字の最も面白いところは、一文字では読めなくても前後の文章から、脳が文字を予測して判読可能にしているところ。

 「れ」や「る」は間違いなく文字だけで読める自信はありませんが、文章の中に入り込むことですんなりと理解できるようになるのだから、何とも不思議なもの。こうした感覚が楽しめる点も、このフォントをつい読みたくなってしまう理由なのかもしれません。

 まるでレトロゲームのような懐かしさを感じさせつつ、グローバルでも注目される斬新さも兼ね備えるという、木材さんのひらがなフォント。今後も更なる改良を図っていき、50音をすべて作ることができれば、何らかの形で配布も検討しているとのことです。今から完成が楽しみになってしまいますね。
 

<記事化協力>
木材/Moku16さん(@Mo_k_u)

(山口弘剛)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 一文字では読めないのに文章になると読める? 不思議なひらがなフォント