2023年3月15日(現地時間)、NASAはアルテミス計画で使用する、新しい月面用宇宙服をお披露目しました。白1色だったアポロ計画のものと違い、ダークグレーを基調にしたスタイリッシュな宇宙服を開発したのは、宇宙ベンチャー企業のアクシオム・スペース。

 この宇宙服が初めて使用される有人月着陸ミッション「アルテミスIII」は、月着陸船の設計や試験が終わっていない関係で、2025年の打ち上げを予定しています。

 1972年のアポロ17号以来、50年以上の時を経て実施される有人月着陸ミッション「アルテミスIII」は、史上初めて女性宇宙飛行士を含むクルーで、これまた初めての場所である月の南極を目指します。ここには、ほぼ間違いなく水(氷)が存在するとされており、将来的な月面基地建設に向け、非常に重要な地域となります。

 NASAでは新しい月面用宇宙服の開発を民間企業に委ねることを決定し、2022年9月にアクシオム・スペースを契約社に選定しました。アクシオム・スペースは、NASAで国際宇宙ステーション計画のプログラム・マネージャを務めた人物らが中心となって設立された、有人宇宙開発ベンチャー企業です。

 今回お披露目された月面用宇宙服は「AxEMU(Axiom Extravehicular Mobility Unit=アクシオム船外活動ユニット)」と命名されました。アポロ計画での宇宙服が白1色だったのに対し、ダークグレーを基調に2トーンの青とオレンジの差し色が印象的なデザインとなっています。

 背中の生命維持装置と頭部のヘルメットは一体構造となっており、そこに柔らかい布地の宇宙服が繋がっているような形状。手袋の指先はグレーとなっており、細かい作業に対応できるようになっています。

 胸にはアクシオム・スペースの「AX」というロゴ。これらのロゴやカラーリングは、アップルTV+で配信されているドラマシリーズ「フォー・オール・マンカインド(For All Mankind)」でコスチュームデザインを手がけた、Esther Marquisさんによるものです。

 NASAが求めたのは、月面で多様な探査活動に対応できるよう、可能な限り柔軟に動けることと月面での危険から身を守れること、そしてさまざまな体格の宇宙飛行士が着用可能であること。結果として、アメリカ人の男女の約90%に対応できるようになっているといいます。

 発表会では学校の児童や生徒が招かれ、宇宙服を着込んだ宇宙飛行士とステージ上で交流する様子も見られました。みんな目を輝かせ、新しい宇宙服に興味津々のようです。

 NASAでは2023年夏から、この宇宙服をプールで行われる宇宙飛行士の船外活動訓練で使用する予定だと明らかにしました。半世紀以上の時を経て、再び人類が月面に降り立つ「アルテミスIII」、2025年に予定されている打ち上げが楽しみです。

<出典・引用>
NASA プレスリリース
アクシオム・スペース プレスリリース
画像:アクシオム・スペース

(咲村珠樹)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 NASAの新しい月面用宇宙服お披露目 民間企業が開発