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飛行機を操縦する人を「パイロット」といいますが、実はこれ、船舶用語から来ていることを知っていますか?海のパイロットは「水先人」とも呼ばれ、港や内海、水路など、その場所を知り尽くしたプロフェッショナル。
入出港時や交通の難所を航行する際、船長に操船を助言して安全を確保する、経験豊富なパイロットについてご紹介します。
パイロットは、港湾や内海、大きな河川や運河を船が航行する際、船長に操船について助言する役割。入港から接岸(係留)までの間、船の操縦を指揮して船や港の安全を守る仕事をしています。
港湾では大小さまざまな船が行き来し、国ごとに交通ルールが設定されています。いろいろな港に出入りする船にとって、そのすべてを把握するというのは非常に困難。そこで、港の構造や潮流、船舶交通事情に精通したパイロット(水先人)が必要となるのです。
日本では国家資格として一級から三級までの水先人免許があり、それぞれ操船を助言できる船の規模や、業務ができる場所の範囲が定められています。制限のない一級水先人の場合、免許の受験資格は3000トン以上の沿海以遠を航行する船舶で、船長として2年以上の業務経験が必要です。
免許試験に合格すると、兵庫県芦屋市にある海技大学校に設置された「水先教育センター」に入り、教育訓練を受けることになっています。所定の養成期間を修了し、試験に合格すると「パイロット1年生」として各地の水先人会(弁護士の「弁護士会」にあたる組織)に所属し、業務に携わることができます。
パイロットは入港時から接岸(係留)までの間、船を安全に誘導することが任務。日本国内の湾など交通量の多い海域では、湾の入り口から港内までを担当する「ベイパイロット」と、港内での離着岸を専門に担当する「ハーバーパイロット」に業務が分かれている場合があります。
パイロットを必要としている船は黄と青の縞模様をした信号旗「G」をマストに掲揚。パイロットはそれを目印に担当する船へ向かいます。そしてパイロットが乗船し、その指揮下にある船は赤と白の信号旗「H」を掲揚し、周囲の船に知らせます。
規模の大きい港湾では、目的の場所まで航路が入り組んでいる場合があり、的確に操船することが求められます。また、着岸時は港湾施設や船体にダメージを与えないよう、毎秒数cmという細心の注意を払った操船が必要。
大型船や自衛艦、軍艦の場合、低速になると舵が効きにくくなるため、離着岸時にはタグボート(曳船)の支援を受けるのが一般的。この場合、パイロットはタグボートの動きも指揮し、スムーズな離着岸を実現します。
このほかにも、船舶用語に由来する航空用語はたくさん。機長を表す「キャプテン(Captain)」も、元は「船長」を指す言葉です。海軍の階級で「キャプテン」が「大佐」となっているのは、大佐が軍艦の艦長を務めることが多いのに由来しています。
飛行機の搭乗券には英語で「Boarding Pass」と書かれていますが、これも船の甲板(Board)に乗ることが語源。「空港(Airport)」という言葉からも、船と飛行機を同じように見ていることが分かりますね。
飛行機も船も、見えない道(航路)を進んでいく乗り物。そういった意味で、昔の人は空を海のように捉え、船舶用語を航空の世界にも当てはめるようになったのかもしれません。
<参考>
日本水先人会連合会 公式サイト
(咲村珠樹)