脳梗塞やくも膜下出血など脳卒中の後遺症で、片方の手が使いにくくなる片麻痺に悩む方は少なくありません。特に両手を協調させて動かす作業が難しくなることで、日常生活にストレスを感じるケースも目立ちます。

 身近な例として、コンビニおにぎりの包装を開封することも、両手でないと難しい作業のひとつ。それを片手で実現できるシンプルな道具を、脳卒中リハビリの専門家が開発。Twitterで発表されました。

 この「片手でコンビニおにぎりを開封できるキット」は、リハビリの現場で働く作業療法士の川口晋平さんと、脳卒中リハビリの専門家である大阪公立大学の竹林崇教授とが手掛ける「片手でできるプロダクト」のひとつ。三角を切り欠いたような形状の枠と、ピンチで構成されたシンプルな道具です。

 使い方も分かりやすくシンプル。まずテーブルに置いた枠に包装されたコンビニおにぎりを入れ、角の部分をスリットから外に出します。そして、枠の外に出た角をピンチで挟んで固定したら、コンビニおにぎりの包装に書かれている手順をなぞります。三角の頂点にある取っ手を引き下げ、枠に沿って斜めに切り取ります。

 これにより、枠に覆われていない側の包装フィルムは抜き取ることができます。ピンチで押さえられているため、スムーズに包装は外れ、海苔を巻いたおにぎりが露出。

 ここまでできればあとは簡単。おにぎりを持って取り出し完了です。

 川口さんと竹林教授は、臨床の現場と大学とで問題を共有し、二人三脚で解決にあたる間柄。問題を克服するアイデアを川口さんが具現化し、それを竹林教授が専門家の立場からフィードバックする形で完成度を高めているとのことで、できあがった道具を対外的に広報する役割は竹林教授が担っています。

 これまで実現した作品では、片手で納豆をストレスなく混ぜられる「片手で納豆かき混ぜキット」や、ペットボトルのフタを片手で開けられるようにしたオープナーなどがあります。どれも片方の手で容器を固定する必要があり、片麻痺の方が苦手にしている動きです。

 今回の「片手でコンビニおにぎりを開封できるキット」の場合、川口さんがSNSや臨床での経験から、片麻痺の方が生活上何に困っているかを見聞きするうち、何人かから「コンビニのおにぎりを開封するのに困っている」という声を聞いたことがきっかけになったのだとか。

 優れた道具はシンプルであり、誰でも機能を十分に発揮できることが重要です。このため、形状の検討はさまざまなサンプルを作り、試行錯誤を重ねた、と川口さん。

 「初期のサンプルを作製したところ、片手で行うには高さが低かったり、クリップをキットに装着しづらかったりしたので、解決するためにどのようにしたらよいかを考え、ブラッシュアップしていきました。最終調整として、実際にコンビニでおにぎりを何度も買い、ストレスなく開封できる角度や寸法を割り出し、調整しています」

 完成したばかりとあって、注文された品を発送する段階のため、実際にユーザーからの声はまだこれからですが、これからもユーザーの声に耳を傾け、より使いやすいものにしていきたいとのこと。こちらのキットをはじめとする「片手でできるプロダクト」は、オンライン販売サイト「nico」にて販売されています。

<記事化協力>
竹林崇さん(@takshi_77)
川口晋平さん(@shinpei_31)

(咲村珠樹)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 リハビリの専門家が開発 片手が不自由でもコンビニおにぎりを開封できる道具