今はすっかりHDDやBlu-rayですが、昔は「録画」といえばビデオテープ。いにしえの(?)おたくは、それはもう丁寧に気に入った番組をビデオデッキで録画していたものです。

 もちろん保管に際しても、何が録画してあるか記入する背ラベルに情熱を注ぎました。そんな情熱ほとばしるビデオテープの背ラベルがTwitterに投稿されました。

 Twitterに「オタクあるある」として「背ラベルに情熱をかける」という言葉とともに、作品に使われているタイトルロゴを模写したビデオテープの写真を投稿したのは、おタケさん。話をうかがうと、これはご本人のものではなく、お父さんが若かりし日に録画したものなのだとか。

 並んでいる作品タイトルを見ると、新解釈の映画が人気を博している「ウルトラマン」をはじめ、東宝のゴジラシリーズや「フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)」、そして「海底軍艦」と、なかなかに通好みのラインナップ。筆者はなんとなく「この人とはうまい酒が飲めそうだ」と思ってしまいました。

 お父さんにうかがってみると、これらのビデオテープは「20歳〜30歳代、昭和の終わりから平成にかけて100本〜200本ぐらい作りました」とのこと。タイトルロゴの模写については「静止画にして見ながら写しましたが、静止はテープにダメージを与えるので短くしました」という思い出を話してくれました。

 今はBlu-rayやHDDからメモリに読み出す形式なので、一時停止で静止画にしてもあまり気にはなりません。ところがビデオテープの場合、回転する読み出しヘッドがテープの同じ場所に接触し続けるため、長時間続けるとテープの磁性体が摩擦ではがれ、画質が劣化してしまう危険があったのです。

 このように、タイトルロゴを目に焼き付けて模写したビデオテープの数々。特撮だけでなく、黒沢作品の映画や、NHKなどテレビのドキュメンタリーを録画したものもあったそうです。

 実は背ラベルにタイトルを記入する際、妥協した面もあったのだとか。「この向きにタイトルを書くと、テープをデッキに挿入する際に上下逆になるのが嫌だったのですが、並べておく時の見栄えを優先しました」というところ、ビデオデッキを使っていた人からすると「それな!」と思うのではないでしょうか。

 また、録画に際しても独特のこだわりが。「ウルトラマン」では、特にお気に入りの話だけVHSの標準モード、それ以外の話は3倍モードで録画されています。制作番号1番の第2話「侵略者を撃て」など、なるほどと頷くチョイスかもしれません。

 これほど情熱を傾けて背ラベルを作ったビデオテープたちですが、残念ながら、予期せぬ出来事で狭い間取りの部屋に引っ越しを余儀なくされた際、置いておくスペースがなく「泣く泣く大部分を処分したので、手元には10本程度しか残っていません」とのお言葉。処分するには惜しい作品も結構あったのだとか。

 現在手元には再生できるビデオデッキがなく、見ることはできないそうですが、このように大事に保管してあるというのは、やはりかけがえない思い出の品だからなのかもしれません。

 おタケさんに話をうかがうと、お父さんはおたくというより、どちらかといえば「博識という言葉が似合う人だと思います」と評してくれました。とはいえ、小さい頃にお父さんと一緒に「ウルトラマン」をビデオで見ていたそうで「私の趣味に影響を与えたと思っています」と、しっかり特撮好きに育ってしまったんだとか。

 今ではパソコンで手早く作業できることもありますが、やはり手書きは人の思いがより深く込められているように思います。作品を見た感動や、それをしっかり残しておきたいという情熱も、これらの背ラベルは伝えてくれているのかもしれません。

<記事化協力>
おタケさん(@/kIAqFcnrXugqX7X)

(咲村珠樹)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 やっぱ力が入るよね! ビデオテープの背ラベルに見る「おたくあるある」