フルスクラッチで作るジオラマには、プラ板やプラ棒といった模型材料のほか、スタイロフォームなどの建築資材や、身近にある様々なものが素材として使われます。その幅広さは、モデラーのイマジネーションを示すものといえるでしょう。

 中世ヨーロッパを思わせる町に降り立ったドラゴン。これ、実は納豆パックなどの廃品で作られているんです。材料費は実質ゼロ円!?

 納豆のパックやヨーグルトの内ブタなど、通常ならゴミとして捨てられてしまうものを材料に造形作品を作っているのは、TwitterユーザーでYouTuberの「ジャンピエール・ド・ビンボー伯爵」さん。作ったジオラマ作品はTwitterで発表しているほか、YouTubeで制作過程を公開しています。
 
 伯爵さんがコツコツと作り続けているジオラマ作品が、架空の街「ノイエ・スケベニンゲン」。街並みからするとドイツ、ベルギー、オランダ辺りがモチーフになっているようです。

 それにしても何故、納豆パックなどを造形素材に用いるようになったのでしょうか。伯爵さんは「超貧乏性なもので、ゴミと呼ばれるようなものでも何かに使えるような気がして捨てることができず……」ときっかけを話してくれました。

 それによると、納豆パックやヨーグルトの内ブタ(アルミ箔)、洗って乾かしたコーヒーフィルターなどが溜まっていくのを見て、このままではゴミ屋敷化すると危機感を覚えた伯爵さん。ちょうど再開しようと思っていたジオラマ作りに、溜め込んだこれらを活用できないかと思いついたんだそうです。

 いわば、増えていくゴミ減量とジオラマ作りの一挙両得を狙って始められた、納豆パックでの創作活動。ドラゴンを例にとると、芯となる大まかな骨組みはヨーグルトの内ブタ(アルミ箔)を針金状に成形したもの、肉付けは切り開いた納豆パックを発泡スチロール用接着剤で巻き付け、造形されています。


 基礎となるスケッチはあるものの、これは造形のたたき台というべき存在で、ディティールなどの細部は「作ってる時、その場で思いついたものがほとんどです」とのこと。

 大まかなフォルムが出来上がると、体表のウロコを表現するため彫刻刀で切り込みを入れていきます。目を立てるように彫刻刀を突き入れると、いい具合にめくれ上がってウロコのディティールが出来ました。

 背ビレや頭のツノなども、納豆パックをギザギザに切って接着し、重ねることでそれらしい姿に。造形のコツについては「難しく考えないで、ともかく楽しんで作ること。思いついたものはなんでも試して、失敗を含めて楽しむ」と語ってくれました。

 ドラゴンの翼は、ヨーグルトの内ブタとコーヒーフィルターで作られています。まず型紙を起こし、ヨーグルトの内ブタをシート状にはり合わせた膜を切り抜いて、針金状に成形した骨に接着していきます。

 このままでも十分な風合いですが、この上にコーヒーフィルターをちぎりながらはり合わせます。デコボコした表面が、逆に質感表現につながってしまうのは驚き。

 表面を100円ショップで調達した水性塗料で塗り重ね、仕上げていきます。この時も基本は「大雑把で無神経に」ということで、色々と楽しみながらが良い結果を生むようです。

 完成したドラゴンを街並みに置いてみると……どうやらちょうど良いサイズ感。ドラゴンは架空の存在なので大きさは一定しないのですが、ジオラマに置くことを考えると、あまり大きすぎない方が合っていますね。

 基本的に、失敗を含めて「楽しく作る」がモットーの伯爵さんですが、人物の顔に関しては「失敗すると修正が難しいので慎重になります」とのこと。顔はフィギュアの出来を左右しますし、小さい部分ですから緊張する部分ですね。

 このほかにも伯爵さんは、納豆パック造形で使う発泡スチロール用接着剤の空きチューブが溜まってきたと見るや、今度はそれを素材に「朽ち果てたキューベルワーゲン」を作り上げてしまいました。そのまま捨ててしまいがちな物でも、発想次第で「素材」として活用できてしまうんですね。


 伯爵さんのYouTubeチャンネル「ジャンピエール・ド・ビンボー伯爵の異世界ジオラマ」では、納豆パックを使った異世界ジオラマが出来上がっていく様子を紹介する動画がいっぱい。造形はイマジネーション次第で無限の可能性がある、と思わせてくれますよ。

<記事化協力>
ジャンピエール・ド・ビンボー伯爵さん(@PMv1BYEzQXq7ohF)

(咲村珠樹)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 材料費は実質ゼロ円!?納豆パックで作った驚異のジオラマ