猫の『視力を低下させる』病気5選 目が見えない、見えづらい猫の特徴は?今まで通りの暮らしはできる?
猫の視力低下の原因となる代表的な病気5つ
視力低下につながる原因は、目そのものと視神経から脳に至る部分での疾患があります。
猫の視力障害の代表的な病気には、以下のようなものがあります。
1.ぶどう膜炎
「ぶどう膜」とは、眼球をぐるりと包んでいる膜のことです。毛細血管が巡っている膜(脈絡膜)と、光とピントを調節する組織(虹彩・毛様体)からできています。
このぶどう膜に炎症が生じるとブドウ膜炎を引き起こし、目の充血、角膜の混濁、眼を気にしてこすりつける、眼が開かないなどの症状が起こります。
原因は外傷のほか、細菌やウイルス、真菌、寄生虫などによる感染症などです。猫エイズや猫白血病ウイルスに感染している猫などは、基礎的な免疫力の低下から、ぶどう膜炎にかかりやすくなります。
ウイルス感染に関しては、ワクチンや完全室内飼いをすることで予防できる場合もあります。また、感染猫と同居猫は隔離するなど、日常生活に対策が可能なものもあります。
2.緑内障
緑内障は、眼圧の上昇によって視神経や網膜が傷つく病気です。
眼球は「眼房水」という液体で満たされていて、通常、眼内圧力は一定に保たれています。
しかし、なにかの原因で正常に排出されなくなると、眼内に圧力がかかり、視神経が圧迫されて視力の低下や視野の狭小化が起こります。
眼房水が排出される経路が邪魔される理由は、眼球内の炎症や水晶体脱臼、高血圧、眼房内出血や慢性的なぶどう膜炎などです。
点眼薬や内服、点滴などで眼圧を下げる内科的治療の他、状態によっては手術をする場合もあります。
3.白内障
白内障は、目にある「水晶体」が濁りはじめる病気で、主な原因は、猫同士のケンカや異物による外傷や炎症などです。
症状が進行するにつれ、白濁した範囲が広がっていき、次第に昼間でも瞳孔が開いたままになります。濁りが見てわかる状態にまでなると、すでに視覚にも障害が出ていることがほとんどです。
白内障は、緑内障と名前が似ていますが、白内障は「白濁する」ことが特徴です。緑内障の名称は、眼圧上昇により角膜が緑色に見えるところから来ています。
猫が白内障になる可能性はあまり高くありませんが、初期段階であれば点眼薬で改善が可能です。
4.高血圧性網膜症
網膜は目の奥側にある薄い膜で、光を感知して脳に信号を送る大切な役割を持っています。
その網膜に損傷を起こす「網膜症」という病気の中に「高血圧性網膜症」があります。高齢猫に多い病気です。
猫が腎臓病や糖尿病、甲状腺機能亢進症などによって高血圧が続くと、次第に血管は常に張った状態になります。血管がうまく収縮できないと、網膜への血流が悪くなり出血や浮腫が生じることで、視力が低下してよく見えない状態になります。
活動が低下し、夜鳴きや暗いときも瞳孔が開いているという症状が見られます。
高血圧性網膜症は、早期に発見できれば、血圧を下げるお薬で回復が可能です。しかし、発見が遅れたり、状態が悪すぎたりすると突然失明してしまう可能性もあります。
もともとは腎不全などから二次的な発症が多いため、根本的な疾患の治療も必要です。
5.腫瘍
眼球や脳内の視神経をつかさどる部分に腫瘍ができた場合には、視力低下から失明に至ることもあります。
眼球に腫瘍ができてしまった場合は、眼球の摘出をすることになります。
脳腫瘍の場合には、視力低下以外に元気喪失や食欲不振などの全身の症状が出てきます。猫の体力や腫瘍の場所によっても、外科手術が可能かどうかの判断が必要です。
そのため、外科手術がむずかしい場合には、抗がん剤や放射線で治療をするか、家族の意向によっては緩和治療のみ選択していくことになります。
目が見えにくくなっている猫の特徴
猫は自分の視力低下をうまく隠してしまうので、飼い主が注意深く観察することが重要です。
以下に、視力が低下してきている猫の兆候をまとめました。
- 行動範囲が狭くなる
- 壁沿いに歩く
- 高いところに登れなくなる
- よく鳴く
- 触れたときに異常に驚く
- 物にぶつかる
- トイレを失敗する
- 同居猫との関係性が変わる
- 明るい所でも瞳孔が開いている
細かくあげるとたくさんありますが、見えなくなることで次第に臆病になる様子が見られます。
猫は聴覚や嗅覚が優れているため、徐々に見えなくなる分には、それまでの生活で得た情報から見えない生活に適応しようとします。
ある程度のレベルまでは、今まで通りの暮らしもできる可能性はありますが、見えなくなることに対しては猫も恐怖心を抱きます。
飼い主は愛猫が快適で安全に過ごせるように、段差をなくし、障害物を撤去する、落下の危険を防止するなどの工夫が必要となるでしょう。
愛猫の視力を守る習慣と予防法
猫の視力が低下する目の病気は、外傷を除くと「高齢猫に多い」「他の疾患からくるもの」という特徴があります。
日頃から愛猫の体調の変化に気を付けていても、進行性の視力低下に関しては、ある程度の異変がないと気付きにくいかもしれません。
猫の視力を守るためには、具体的な行動が大切です。
感染症による目の病気を予防するために、ワクチン接種を定期的に行いましょう。特に、ぶどう膜炎を引き起こす可能性のある病原体に対する予防接種は重要です。
また、家庭での日常的な観察から、視力低下につながるような異常を早期に発見できるようにしましょう。特にシニアになったら、年1~2回の健康診断は病気の早期発見につながります。
まとめ
猫の視力低下の原因となる5つの主な病気について解説しました。
猫の視力が低下する原因は、外傷を除けば慢性的な疾患によるものが多く、高齢猫に多く見られます。
嗅覚や聴覚が優れている猫は、両目が失明しない限りは、まったく何も見えない・わからないという状況にはなりません。
しかし、これまで見えていたものが見えなくなってくるというのは、猫にとって多大なストレスとなります。
ワクチン接種や日頃からの観察と定期健診など、予防できるものは、しっかりと予防してあげるようにしましょう。そして少しでも心配があるときには、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
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