猫の「痙攣」を引き起こす病気7選 起きたときの正しい対処法や治療法など
猫の痙攣を起こすことがある病気7つ
健康な猫が眠っているときに耳や手足がピクピクするのは、ごく自然なことなので心配はいりません。しかし、突然ひきつけを起こし、よだれを出すような痙攣の場合は病気の可能性があります。
痙攣を引き起こす病気にはどのようなものがあるのか、見てみましょう。
1.てんかん
てんかんは、脳の病気です。中枢神経系が何らかの理由で過剰に活発になり、筋肉が異常に収縮する状態を引き起こします。
てんかんの発作では、以下のような症状が見られます。
- 意識の喪失
- 手足が硬直して伸びきる
- バタバタと転げまわる
- 失禁
- 手足のひきつり
- 歯をガチガチ嚙合わせる
- よだれ
などが主な症状です。
発作中に猫に意識があるときは、自分の体の異常に反応して唸り声をあげたり、暴れたりすることもあります。
2.中毒
何かを口にしたあとの痙攣は中毒かもしれません。
猫が誤摂取しやすいものは、以下のようなものがあります。
- 殺虫剤
- 農薬や肥料
- 特定の植物(ユリ科、ナス科、サトイモ科など)
- カフェイン飲料やお酒
- キシリトール
- 犬用ノミダニ駆除薬や皮膚薬
猫の飼い主さんは、ふだんから猫にとって危険なものには十分気を付けていることでしょう。しかし、犬と猫を一緒に飼われている家庭では、犬用の薬にも注意してください。
犬用ノミダニ駆除薬や皮膚薬には「ペルメトリン」という成分が使われているものがあります。これらを誤って猫に使用する、あるいは薬を塗布した同居犬を猫が舐めてしまうと、痙攣をともなう中毒症状があらわれることがあります。
3.熱中症
猫が熱中症になり重症化すると意識を失い、痙攣を起こして呼びかけに反応できなくなります
高温多湿になりやすい環境では、猫も体の中から熱が逃げずに熱中症になるリスクが高くなります。特に猫はメインの食事がドライフードで、なおかつ十分な水分を摂取していない子は、軽度の脱水が熱中症の引き金となりやすくなるため危険です。
体温が急激に上昇すると、体を構成しているタンパク質などが変性してしまい、さまざまな臓器の機能に障害が起こります。さらに脱水が起こると水分や各栄養素、酸素などが必要なところに届かなくなり、さらに障害が進み多臓器不全に陥ります。その結果痙攣が起こったりします。
暑い場所にいたせいで痙攣が出て、ぐったりしていたら、緊急対応が必要です。
4.脳腫瘍
もし、痙攣をくりかえす場合は、脳腫瘍の可能性も考えられます。若い猫でもリンパ腫や髄膜腫で脳に腫瘍ができることがあります。
脳腫瘍で見られる症状は、痙攣のほかに「首をかしげたまま戻せない」、斜視や眼振、瞳孔の非対称など「目の異常」、「歩行異常」などです。
脳の腫瘍によって脳からの信号が乱れ、筋肉への指令が正しく届かないことで、筋肉の収縮がコントロールできなくなります。その結果、痙攣を引き起こしてしまうのです。
子猫に発症する「水頭症」は、遺伝的な要因から脳腫瘍と同じように痙攣や歩行困難を起こしますが、発症率はあまり多くないといわれています。
5.腎不全(尿毒症)
腎不全とは、腎臓が正常に機能できなくなり、余分な水や老廃物を排出できない状態をいいます。猫が腎不全になる原因はさまざまですが、慢性腎不全のケースでは、老化や先天性異常、感染症などが主な原因となります。
腎不全が進行すると、通常であれば尿と一緒に体外に排泄される有害物質が体内にたまっている状態となり、尿毒症を発症します。
尿毒症になると食欲不振や吐き気が起こり、重症化するほど痙攣や意識レベルの低下がみられます。
6.ビタミンB1欠乏症
ビタミンB1欠乏症になった猫は、歩行困難や痙攣などの症状を発症します。ビタミンB1欠乏症の原因は偏った食事です。
生の魚介類には、ビタミンB1を分解する酵素が多く含まれているため、加熱されていない魚介類ばかりを猫に与えているとビタミンB1が破壊されて欠乏が起こります。
魚をメインに与えられている猫や栄養管理をともなわない手作り食の猫には注意が必要ですが、通常、市販されている総合栄養食のキャットフードを与えていれば、回避できる疾患です。
7.感染症
ウイルス、真菌、寄生虫などによる感染症も、痙攣の原因となります。
以下の病気では病原菌によって脳炎が起こり、痙攣を引き起こします。
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)
- クリプトコッカス症
- トキソプラズマ症
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、胸水や腹水の溜まるウェット型と脳炎、脊髄膜炎が見られるドライ型があり、ドライ型で痙攣症状が出ることがあります。治療がむずかしい病気ですが、ワクチンで予防可能です。
クリプトコッカス症は真菌が原因で、ハトなど鳥類の乾燥した排泄物を吸ってしまうことで感染します。病原菌が神経に感染すると、痙攣や麻痺、意識障害などを起こす危険があります。室内飼いをしていれば感染を防げます。
また、人にも感染するおそれのあるトキソプラズマも脳炎を起こすことがあります。トキソプラズマ症は健康的な猫であれば無症状か軽い下痢程度ですが、子猫や免疫不全の猫が感染すると、肺炎、肝臓肥大などとともに脳炎からの痙攣が出ることがあります。
愛猫が痙攣を起こしたときの対処法
発作が起こる前兆として、落ち着きがなくなったり、一点を見つめたまま動かなくなったり、興奮するなどの異常が見られることもあります。
てんかんの全身痙攣は、手足がバタバタ動いて地面を転げ回り、失禁をともなうこともあるので、見ている方はショックも大きいかもしれません。たいていは数分程度で何事もなかったかのように、いつも通りに過ごし始めます。
発作中の猫は無意識なので、直接体にさわると噛まれてしまう危険があります。大きなバスタオルや毛布などをそっと掛けて、発作が落ち着くまで待ちます。猫がぶつかってケガしないようクッションなどで周囲をカバーするとよいでしょう。病院へ連れて行くのは発作がおさまってからで大丈夫です。
病院に行くときには、以下の情報があるとよいでしょう。
- 発作が続いた時間と様子
- 発作前に変わった行動があったか
- 与えている食べものや食欲
- 痙攣以外の異常
また、発作中の動画があると、そのときの状況がわかりやすいため、もし余裕があるようなら撮影しておきましょう。
痙攣の治療法
痙攣の治療では、抗けいれん薬が処方されることが一般的です。発作の予防や回数を減少させるのが狙いです。また、痙攣の原因となる病気が判明すれば、それぞれに応じた治療を行います。
- 中毒:有毒物を排出させる処置として、吸着剤や点滴、解毒剤を使用
- 腫瘍や脳炎: 状態により、手術や放射線療法
- 腎不全:尿毒症対策として輸液療法
- 感染症: 抗生物質や抗真菌薬の投与
痙攣の治療法は、その病状や獣医師の判断により異なることがありますが、いずれも自宅でのケアが中心となることがほとんどです。飼い主は、かかりつけの獣医師と連携しながら対応することが、愛猫の生活の質を維持するために不可欠です。
まとめ
筋肉が勝手に動いてしまう痙攣は、かくれた病気が関わっていることがあります。
痙攣の原因として、脳に問題がある場合や、代謝の問題(たとえば腎不全など)が考えられます。脳に関する問題では、特発性てんかんなど原因が不明な状態も考えられます。
痙攣の発作中に猫には意識がないことが多いため、安全を確保することが最優先になります。
その上で、その様子を動画に記録しておくと、病院での診断に役立ちます。病院での診察時には、動画を獣医師に見せることで、より正確な診断が得られるかもしれません。
痙攣の原因となっている病気は自宅でのケアも重要となるため、飼い主はかかりつけの獣医師と連携しながら猫の状態を管理することが大切です。
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