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まず、日本人の大規模研究として初めて、仕事時間と余暇時間を含むすべての日中座位時間について、長いほど死亡率と関係することが明らかになりました。
また生活習慣病の有無に関わらず、日中の座位時間が長いほど死亡率が高くなり、生活習慣病の保有数が多いほど、死亡率も高くなったのです。
そして一番驚きなのが、余暇の身体活動量を増やしても日中の座位時間の長さと死亡率の関連を、完全に抑制できないと明らかになったことです。
上のグラフではQ1がもっとも運動量の少ないグループ、Q4がもっとも運動量の多かったグループ別の座位時間と死亡率を示したものです。
図の左から右に行くほど、余暇に運動していた人たちということになります。
しかし、糖尿病を除くと、ほとんど死亡率に変化が見られません。
つまり、余暇時間にいくら運動しても、座位時間が増えることで増加した死亡率の増加は解消されなかったのです。
デスクワークは多くの人が従事する職業です。現在はテレワークの普及に伴い、さらに座りっぱなしで過ごす人が増えている可能性もあります。
しかし、連続して座りっぱなしの状態を続けることは、非常にリスクを伴う行為であるということを理解しておかねばなりません。
研究の結果によると、余暇時間の身体活動量を増やしても、座位時間が及ぼす健康被害の減少効果はごくわずかであることがわかります。
これは座っている時間を短縮する努力が必要ということを示しているのです。
かつてある会社が、社員を立ちっぱなしで作業させていて批判されたりしていましたが、実はかなり人道的な行為だったのかもしれません。
特に日本は世界各国と比較しても、日中の座位時間が長いことが示されています。
研究者は、連続した座位時間を中断することの重要性を訴えており、こまめに動くことで、連続した座位時間を減らすことを心がけるべきだと話しています。
とはいっても、デスクワークに従事している人は、この事実がわかったからといって、日中の座り時間を自由にコントロールすることは難しいでしょう。
「もはや座して死を待つのみ」
デスクワークとは、死を覚悟した侍の境地にある過酷な職業だったのかもしれません。
※この記事は2021年6月公開のものを再掲載したものです。
この記事内容については新しいデータ報告があります。2023年の「British Journal of Sports Medicine」誌掲載の論文では1日12時間以上の座位による健康リスクは1日22分程度の運動で相殺できる可能性が示されており、デスクワークも助かる可能性があります。
参考文献
座っている時間が長いほど死亡率が増加する ~その効果は、余暇時間の運動活動量を増やしても、完全に抑制されない~(京都府立医科大学)
https://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2021/20210625.html
元論文
Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All‐Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J‐MICC Study
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.120.018293
ライター
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。
編集者
やまがしゅんいち: 高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?