DNAをヒントに「寿命を設定できるプラスチック」を開発
私たちは普段、使い終わったプラスチック容器をリサイクル用の袋に入れておけば、その多くが新しい製品として生まれ変わると思いがちです。
しかし実際には、リサイクルされるプラスチックは全体のごく一部にとどまり、残りは焼却や埋め立てに回されることが多いとされています。
特に、食品がこびりついた弁当容器や、油汚れの強い総菜トレー、さらに複数の素材が貼り合わされた包装フィルムのように、洗っても汚れや異物が残りやすい容器は、現状の技術ではリサイクルが難しい分類に入ります。
こうした“行き場のないプラスチック”は自然環境に流れ込みやすく、海や土の中で何十年も姿を残し続けてしまいます。
その一方で、自然界にある DNA やタンパク質は、必要なときに作られ、役目を終えると静かに分解される仕組みを持っています。生き物の分子は、「使う」と「片付く」が最初から一体として設計されているのです。
米国ニュージャージー州のラトガース大学(Rutgers University)の研究チームは、この自然の仕組みにヒントを得て、まるで生き物のように“寿命を設定できるプラスチック”の開発に挑みました。
使われている間は丈夫で、役目を終えると静かに姿を消していく――そんな未来の素材が、本当に実現しつつあります。
この研究の詳細は、2025年11月28日付けで科学雑誌『Nature Chemistry(ネイチャー・ケミストリー)』に掲載されています。
目次
- DNAから着想を得た“寿命つきプラスチック”のしくみ
- なぜ分解できるのか、どこまで実用化できるのか
参考文献
Scientists Develop Plastics That Can Break Down, Tackling Pollution
https://www.rutgers.edu/news/scientists-develop-plastics-can-break-down-tackling-pollution
元論文
https://doi.org/10.1038/s41557-025-02007-3
ライター
相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。
編集者
ナゾロジー 編集部