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これまでの多くの研究が、コーヒーは健康に良い効果をもたらす事が報告されています。
例えば、1日3–6杯のコーヒーが心血管疾患や2型糖尿病のリスクを低下させるという研究もあります。
しかし、これらの研究の多くは「コーヒーの量」に注目しており、「飲むタイミング」については十分に調査されていませんでした。
コーヒーと言えば、興奮作用を持つカフェインが代名詞になるくらい主要な成分になっており、目が覚めると感じる人もいれば、効果が強すぎて飲むと眠れなくなるという人もいます。
そのため朝に飲むコーヒーは、目覚めを助け、体内時計を整える効果があると考えられる一方で、午後や夜のコーヒー摂取は睡眠を妨げる可能性が指摘されていました。
そこで今回の研究者たちは、コーヒー摂取のタイミングが健康効果にどのような影響を及ぼすのか調査することにしたのです。
もしコーヒーを飲むタイミングで健康効果が変わるのであれば、より効果的にコーヒーを楽しむことが出来るようになるはずです。
今回の研究では、1999年から2018年のアメリカ国民健康栄養調査(NHANES)のデータを使用し、約40,000人の成人を対象にコーヒー摂取のタイミングと健康状態を分析しました。
研究チームは、コーヒーを飲むタイミングによって参加者を「朝型(4時–11時59分に飲む)」「終日型(一日中飲む)」「飲まない」の3つのグループに分け、年齢、性別、体重、喫煙習慣、食事内容、睡眠時間などの要因を考慮した上で、心血管疾患やがんによる死亡率、及び全死亡率との関連を統計的に解析しました
すると分析の結果、朝だけコーヒーを飲む人は、心血管疾患による死亡リスクが約31%低下するという結果が得られたのです。
一方で、1日中コーヒーを飲むという人は、朝型の摂取ほど明確な健康効果が観察されませんでした。ただこれは朝以外のコーヒー摂取が全く健康に寄与しないということではなく、むしろ飲むタイミングで健康効果が高まる可能性を示唆するものです。
このような違いが生じた原因について、研究者は主に体内時計にコーヒーが影響を与えるためではないかと疑っています。
コーヒーには体内の抗炎症効果を高める効果がありますが、午後や夜に飲んでしまうと体内時計を乱してしまい、健康への影響を弱めてしまう可能性が考えられるのです。
また興味深いことに、今回の研究ではカフェイン入りコーヒーだけでなく、ノンカフェイン(デカフェ)コーヒーでも同様の効果が観察されました。
カフェイン入りの方が、健康効果は強く確認されましたが、この結果はコーヒーの健康効果が単純にカフェインの有無だけで決まらないことを示しています。
研究者たちは、この結果がコーヒーに含まれるポリフェノールや抗酸化物質などの効果によるものではないかと推測しています。
今回の研究は、コーヒーの健康効果における「飲むタイミング」の重要性を明らかにしています。
これからは、もし朝何を飲むか迷ったときは、コーヒーを選択してみるといいかもしれません。
参考文献
Morning coffee may protect the heart better than all-day coffee drinking
https://www.eurekalert.org/news-releases/1069398
元論文
Coffee drinking timing and mortality in US adults
https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehae871
ライター
相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。
編集者
ナゾロジー 編集部