これから年末に向けて、忘年会やクリスマスパーティー、大晦日など、人と集まる機会が増えるでしょう。

そこで気をつけたいのが「ホリデーハート症候群(Holiday Heart Syndrome)」です。

「そんなの聞いたことないよ」という方が多いと思いますが、医学会では1970年代から知られています。

この病名はホリデーシーズンにかけて不整脈の患者が急増することから命名されました。

ホリデーハート症候群とは一体何が原因で起こるのでしょう?

またホリデーハートを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?

目次

  • ホリデーハート症候群の元凶は「お酒のガブ飲み」
  • ホリデーハート症候群にならない最適な方法

ホリデーハート症候群の元凶は「お酒のガブ飲み」

今年もあと2週間足らずで終わりです。

あっという間にまた1年が過ぎ去ってしまいましたが、これから年末にかけて怒涛の日々を過ごす方も多いのではないでしょうか。

会社の忘年会、友人や恋人とのクリスマスパーティー、家族や親戚で集まる大晦日などなど、年末特有の予定がギュウ詰めになっているかもしれません。

人と集まって何を楽しむかというと、言うまでもなく「お酒」ですよね。

ビールにワイン、シャンパンに日本酒と、年末シーズンはお酒を飲む機会がいやでも増えます。

実はこの飲酒こそ「ホリデーハート症候群」の元凶なのです。

そう、ホリデーハート症候群とは、普段と違って急に過度のアルコール摂取をすることで、心臓に過度なストレスがかかり、突発的に不整脈を起こす症状を指すのです。

飲酒量の急な増加に伴う不整脈が、ホリデーシーズンのパーティーでよく見られることからこの病名がつけられました。

Credit: canva

ホリデーハート症候群には主に、次のような特徴が見られます。

・心臓の上部にある心房が不規則に震え、脈が乱れる不整脈の一種「心房細動」が起こる

・急なアルコール摂取後のおよそ数時間〜1日以内に症状が現れることが多い

・それ以前に心臓の持病などがない健康な人でも発症する

・普段あまり飲酒しない人でも、一時的な暴飲がきっかけで発症する

ポイントは急に飲酒量が増えてしまえば、誰でもホリデーハート症候群になりうる点です。

アルコール摂取量の急増は心筋の動きに直接影響を与え、電気信号を乱すことで不整脈へとつながります。

またアルコールの利尿作用も、体内の水分や電解質(カリウムやマグネシウム)を失わせることで、心筋の働きをおかしくさせます。

それから過度の飲酒による興奮やストレス、睡眠不足が交感神経を活性化させて、心拍数の増加や心拍のリズム不全を招くのです。

Credit: canva

年末シーズンの非日常的な解放感から、お酒を急にガブガブ飲んでしまう人はたくさんいます。

こうした人たちはホリデーハート症候群に片足を突っ込んでしまっている状態と言えるでしょう。

ホリデーハート症候群を起こすと、不規則な心拍のほか、動悸や眩暈、息切れ、胸の不快感や痛み、ふらつき、不安感などに襲われます。

患者の症状の多くは一過性のもので、アルコールが代謝されると次第に不整脈が収まりますが、中には重症になるケースもあります。

その場合は直ちに病院に行き、薬物療法などの治療を受けなければなりません。

こうなってしまうと、せっかくの年末が台無しです。

そこで最後に、ホリデーハート症候群を起こさない最適な方法について見ておきましょう。

ホリデーハート症候群にならない最適な方法

会社や友人との集まりで、お酒を一滴も飲まないことは難しいですし、普段以上に飲酒量が増えるのも避けられないはずです。

しかし適切なお酒の飲み方さえ守れば、ホリデーハート症候群を回避することはできます。

まず1つ目は「空きっ腹でお酒を飲まない」ことです。

空腹の状態で飲み会に参加し、乾杯の音頭でいきなりお酒をグイ飲みする人は多いかもしれません。

これはNGです。

空腹状態でアルコールを多量に摂取すると、胃腸がアルコールを吸収しやすいため、急激に血中のアルコール濃度が上がるからです。

そうなると心筋がアルコールの悪影響をより受けやすくなります。

2つ目は「食事を食べながら、ゆっくり飲む」ことです。

お酒と一緒に食事を摂ると、アルコールと胃の粘膜の接触が緩和され、アルコールの吸収が緩やかになります。

また食べ物によって胃が活動し、腸との間にある弁膜を閉じることで、アルコールが腸に移動することも遅らせられるのです。

加えて、食べ物に含まれる水分は血中のアルコール濃度を薄める働きもしてくれます。

そしてお酒を飲む速度が速いと、血中のアルコール濃度が急に高まりやすいので、「ゆっくり飲む」ことも大切です。

Credit: canva

3つ目は「強いお酒は薄めて飲む」ことです。

これは言わずもがなですが、アルコール度数の高いお酒は胃腸の粘膜を強く刺激し、少量でも酔いが回りやすくなります。

そのため、アルコール度数が高いものは薄めて飲むか、合間に水を適度に飲むことを忘れないようにしましょう。

4つ目は飲み会が終わった後に「運動と入浴を控える」ことです。

お酒をたくさん飲んだ後は血中のアルコール濃度が高くなっており、体は頑張ってアルコールを分解しようと働きます。

ところがこの段階で運動や入浴をすると、血液が筋肉に分散して内臓に血液が集められず、アルコールの分解が遅くなってしまうのです。

人によっては酔いを醒まそうと運動したり、熱いシャワーを浴びる方もいますが、これはむしろ逆効果だと言えます。

また酔っている状態での運動や入浴は、ケガや事故のリスクも高めるので控えましょう。

そして5つ目は「休肝日をつくる」ことです。

年末シーズンに連日連夜お酒を飲みっぱなしだと、胃腸の粘膜がダメージを受けて、アルコールの分解能が落ちてしまいます。

そこで休肝日を設けて、胃腸を回復させることが肝心です。

例えば、2〜3日飲みが続いたら翌日はお酒を飲まない習慣を作るといいでしょう。

ホリデーハート症候群に注意して、健康で楽しい年末をお過ごしください。

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参考文献

‘Holiday Heart’Is a Serious Medical Issue Triggered by Festive Booze
https://www.sciencealert.com/holiday-heart-is-a-serious-medical-issue-triggered-by-festive-booze

アルコール健康医学協会:お酒と健康 適正飲酒の10か条
https://www.arukenkyo.or.jp/health/proper/index.html

元論文

Holiday Heart Syndrome
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537185/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 【年末に心臓病が急増】人付き合いの多い人ほど要注意の「ホリデーハート症候群」