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日常生活で、誰しも一度は「嘘」をついたことがあるでしょう。
例えば、友達からの誘いを断るために「忙しい」と言ったり、同僚を気遣って「その髪型似合ってるよ」と褒めたりなど。
その嘘は必ずしも悪意があるものではなく、時には人間関係を円滑に保つための「優しい嘘」かもしれません。
一方で社会全体を揺るがすような嘘もあります。
ビジネスの場における不正広告、政治家の虚偽発言、信頼を裏切る浮気や隠し事など、嘘がもたらす影響が軽いものから深刻なものまで多岐にわたります。
しかし、これらの嘘をつく行為は一体どこから生まれてくるのでしょうか。
また人はなぜ時に自分の利益のために嘘をつき、他人のために嘘をつくのでしょうか。
その問いに対し、性格の側面から答えを出そうとした研究があります。
それは 米セント・メリーズ大学のジェニファー・マッカーサー(Jennifer McArthur)氏らの研究です。
彼らは人が嘘をつく理由を洗い出し、以下の11項目に分類しました。
そして参加者に上記の11項目を見せ、どの動機に基づき嘘をついた経験があるか、またその頻度を尋ねました。
また同時に性格特性に関する質問紙に回答してもらい、嘘をつく種類や頻度と性格の関連性を分析しています。
実験の結果、参加者約77%が週に3回ほどしか嘘をついていないと回答し、残りの参加者は週に3-7回の嘘をついていると回答しました。
しかし、これらの報告は自己申告での回答に基づいているため、おそらくより高い頻度で嘘をついているものと考えられます。
また過去6カ月の間についた嘘の動機として一番多かったのが、他者を傷つけないためなどの利他的な理由でした。
その次が秘密にするため、否定的な評価を避けるためと続きました。
さて、性格と嘘の種類の関係性についてはどのような結果が出たのでしょうか。
まず真面目な人は道徳心や責任感が強く、嘘をつく頻度が少ない傾向がありました。
おそらく真面目な人は、約束を守ることや正直でいることを大切にするため、隠し事やごまかしをしないよう心がけることが多いようです。
一方で心配性な人や協調性が高い人は、気まずい状況を避けるために嘘をつくことが多いことが分かりました。
読者の皆さんも、友人からの誘いを断りづらく、「忙しいから行けない」と嘘をついてしまうことがあるでしょう。
心配性な人や協調性が高い人は、特にこの傾向が強いようです。
また、外向性が高い人は、衝動的な嘘や他人から肯定的な印象を得たいという思いから嘘をつく傾向があります。
これは自分の実績や経験を少し誇張して話すことで、会話を盛り上げたり、他者から注目されたいと感じることがあるということでしょう。
最後に創造性の高い人は、他人の気持ちを重んじる傾向が強く、思いやりや配慮から嘘をつくことが多いことが分かりました。
人は時に自分を守るため、そして他人を思いやるために嘘をつきます。
嘘をつく行為は必ずしも悪意に基づくものではなく、時には優しさや配慮の現れでもあることを忘れてはいけません。
この研究の結果からも、人は利他的な理由から嘘をつくことが最も多く、悪意を持って相手に嘘をつくことのが意外にも少ないことが分かるでしょう。
嘘の「種類」と「動機」に注目し、日常のコミュニケーションを振り返ってみてはどうでしょうか。
嘘との向き合い方を見つめ直すことで、より良いコミュニケーションや信頼関係を築く一歩につながるかもしれません。
参考文献
What Do Your Lies Say About Your Personality?
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/the-teen-doctor/202307/what-do-your-lies-say-about-your-personality
Research Reveals the Most Common Reasons People Lie
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/finding-a-new-home/202207/research-reveals-the-most-common-reasons-people-lie
元論文
Lying motivations:Exploring personality correlates of lying and motivations to lie.
https://psycnet.apa.org/record/2022-44652-001
ライター
AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしていました。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。
編集者
ナゾロジー 編集部