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フォアグラは、世界三大珍味として有名な食材であり、ガチョウやアヒルに大量のエサを与え、肝臓を肥大させて作ります。
深い旨味とコク、口の中でとろけるような食感が人々に愛されてきました。
ソテーにしたり、パテに加工してパンに塗ったりして食べるのが一般的です。
赤身肉ともよく合い、フォアグラとトリュフをのせて焼いたヒレ肉のステーキ「牛ヒレ肉のロッシーニ風」は有名です。
また、テリーヌ(ムース状にした食材を型に入れてオーブンで焼いたり湯煎したりしたもの)にもフォアグラが使用されることがあり、これまで幅広い調理法で楽しまれてきました。
フォアグラは世界中で食されてきましたが、主にフランスで生産されており、消費量もダントツです。
また日本はアジア最大のフォアグラ消費国であり、様々な料理にフォアグラを使用してきました。
しかし昨今、フォアグラの生産方法が問題視されるようになり、状況が大きく変化しています。
効率的にフォアグラを生産するため、大規模農場では、数千羽のガチョウやアヒルが狭いケージで飼育されます。
そしてそれらの肝臓を肥大させるため、強制給餌を行っているのです。
ガチョウやアヒルたちは、口に漏斗をつっこまれ、胃に強制的にエサを送り込まれます。
この強制給餌の様子を、動画などで見たことのある人もいるでしょう。
そのため近年では、いくつかの国でフォアグラが「道徳的に問題のある食材」と見なされ、禁止する国や州が増えてきました。
日本でもフォアグラの輸入量は、ここ十数年で90%以上減少するなど、市場に出回らない食材となりつつあります。
こうした背景にあって、近年注目が集まっている「培養肉」の技術が役に立つと考えられるのです。
培養肉とは、動物の可食部の細胞を組織培養することで得られる食用の肉です。
動物を犠牲にしないこと、土地利用の効率化、環境配慮などのメリットがあり、2010年代から商業化に向けた動きが本格化しました。
2023年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)が培養鶏肉の販売を承認しています。
そしてオーストラリアの食品会社Vowは、この培養肉の技術を導入することで、フォアグラの生産問題にアプローチしています。
彼らは強制給餌でフォアグラを作る代わりに、実験室でフォアグラに似た食材を作ることで、人々を楽しませたいと考えているのです。
Vow社が開発する培養フォアグラ「Forged Gras」は、正確にはフォアグラとは異なっており、日本産ウズラの細胞を使用しています。
これに植物由来の脂質とソラマメ由来のタンパク質、香料を組み合わせました。
実験室で79日間の培養プロセスを経て作られており、従来のフォアグラのように、動物が犠牲になることはありません。
そして、このように作られた培養フォアグラについて、Vow社は「脂肪肝の食感と、繊細で野性味のある風味をもつ」と表現しています。
写真にあるように、この培養フォアグラを使って、ソテーやパテ、裏巻きなどを楽しむことができます。
この培養フォアグラは、今後、これまで培養肉の認可が下りていなかった香港で新しく販売される予定であり、今後、フォアグラの代替品として活躍していく可能性を秘めています。
もしかしたら今後、フォアグラ以外にも、「倫理的に際どい食材」や「希少な食材」を「培養技術」によって楽しめるようになるかもしれませんね。
参考文献
One of the world’s cruelest delicacies gets a guilt-free makeover
https://newatlas.com/technology/lab-grown-foie-gras-vow/
Forged Gras
https://www.forgedbyvow.com/flavours/forged-gras
Vow
https://www.eatvow.com/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部