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このような視点は、トップアスリート以外の運動好きにも参考になります。
実際、別の研究でも、有酸素運動(例:ジョギング)と無酸素運動(例:筋力トレーニング)の両方を取り入れることで、どちらかを単独で実施するよりも健康面に好影響が期待できることが分かっています。
一方で、分析の結果、寿命にマイナスの影響を与える可能性のある種目もあることが分かりました。
次のページでは、寿命に悪影響を及ぼす可能性のある種目や女性の元トップアスリートの結果を見ていきます。
男性の元アスリートの場合、ボクシングや武道(柔道やテコンドーなど)、バレーボール、相撲などの種目は寿命が短く、特に相撲は約10年も短命という統計が得られました。
これらの競技に取り組む男性の寿命が短い理由としては、脳震盪などの特有のダメージや、特に力士に課せられる極端な食事が影響している可能性があります。
彼らのほとんどが長生きするために競技をしているわけではありませんが、トップアスリートであっても、現役時代よりも引退後の生活が人生の大半を占めることになります。
また、親の立場になってみても、子どもに健康が脅かされるスポーツを選んでほしいとは思わないでしょう。
その意味で、これらの競技に関わる人たちは、引退後の生活が健全で充実したものであるよう、適切なサポートや環境づくりが求められます。
女性の元アスリートについては、対象者が少なかったため、男性よりも詳細な分析が難しかったものの、寿命にプラスの影響を与えそうな種目は少なく、水泳やスキー、短距離走、陸上競技の混合、バスケットボールなど、多くの種目でマイナスの関連が見られました。
では、女性アスリートの活動が寿命にプラスに寄与しない場合、その理由は何でしょうか?
研究グループは仮説として、女性の寿命が男性よりも長いため、すでに寿命延長の限界に達している可能性や、女性の場合にはアスリートが行うような激しい運動よりも、適度な運動がより有益である可能性を挙げています。
総じて、今回の研究は、トップアスリートといっても、取り組むスポーツや性別によって寿命に対する影響が大きく異なることを示唆しています。
特に女性の元トップアスリートを対象とした研究データが不足していることは、他の研究でも指摘されており、女性がトップアスリートとして過ごすことの生涯の健康に関する理解を深めるためには、今後の研究成果が求められています。
参考文献
Associations Between Professional Sports and Longevity
https://www.lifespan.io/news/associations-between-professional-sports-and-longevity/
元論文
Sport and longevity: an observational study of international athletes
https://doi.org/10.1007/s11357-024-01307-9
ライター
髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。
編集者
ナゾロジー 編集部