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エナジードリンクは、カフェイン、砂糖、タウリン、ガラナ、ビタミンBなどの成分を高濃度に含んでおり、エネルギーや注意力、身体能力を高めるために作られています。
しかし、エナジードリンクがアルコールの鎮静効果を覆い隠し、飲んだ量を意識しにくくするという問題があります。
エナジードリンクに含まれる非常に高濃度のカフェインは、アルコールの眠気効果を鈍らせるため、「完全に酔っている」状態を自覚しにくくします。
その結果、飲み過ぎたときに体が通常送る信号を見逃し、通常よりも多くのアルコールを摂取してしまう可能性があります。
これらの特定のドリンクが市場から撤退したとしても、エナジードリンクとアルコールを混ぜるカクテルは依然として簡単に作れるため、若者を中心に人気があります。
アルコールには鎮静作用があり、リラックスした気分にさせる一方で、疲労感を感じさせる残留効果もあります。
リラックスしたいが疲れたくないという人は、興奮剤であるカフェインを加えることで気分を盛り上げ、疲労感を感じずにリラックスした気分を楽しむことができます。
しかし、研究者の中にはアルコールとカフェインの組み合わせを「最悪の組み合わせ」と表現する人もいます。
そこで今回、カリアリ大学の研究者たちは、アルコールとエナジードリンクが脳に与える影響を調べるため、ラットを用いた実験を行いました。
この研究では、生後28日の若いラットを用意し、それぞれのラットの胃に直接チューブを挿入して、アルコール、エナジードリンク、およびその混合液を投与しました。
投与されたアルコールの濃度は20%で、エナジードリンクは「レッドブル」として知られる高カフェイン飲料が使用されました。
ラットたちは生後37日になるまでこれらの飲料を与え続けられました。
その後、大人になったラットたちに対して、活動力や記憶能力のテストが実施されました。
このテストにより、若い時期にアルコールやエナジードリンク、またはその組み合わせを摂取し続けた場合の長期的な影響を調べました。
結果として、エナジードリンクだけを与えられたグループは他のすべてのグループよりも活動的である傾向が見られましたが、新しい物体を認識するテストでは成績が悪いことが判明しました。
一方、アルコールとエナジードリンクを混ぜて与えられたラットは、生後40日目には脳のシナプスの可逆性(シナプスが変化しやすい状態)が増加したことが確認されました。
シナプスの可逆性が高い脳は、新しい神経接続が作られやすく、新しい記憶や概念を認識するのに有利とされています。
しかし、生後60日目から90日目になると、このグループのラットではシナプスの可逆性が他のグループに比べて減少することが明らかになりました。
また、ニューロンの成長、維持、生存に重要な役割を果たすタンパク質である脳由来神経栄養因子(BDNF)のレベルを分析したところ、このグループのラットでは生後40日のときにBDNFレベルが上昇し、生後60日のときに低下する傾向が示されました。
脳由来神経栄養因子(BDNF)は、ニューロンの成長、維持、生存に重要な役割を果たすタンパク質です。
BDNFのレベルが高い場合、ニューロンの成長を促進し、シナプスの可塑性(シナプスが変化しやすい状態)を向上させます。
これにより、新しい神経接続が形成されやすくなり、学習能力や記憶力が向上します。
また、BDNFはストレスに対する耐性を高め、精神的な回復力を強化する役割も果たします。
一方、BDNFのレベルが低い場合、記憶力やストレス耐性が低下し、うつ病などの精神疾患のリスクが上昇することが知られています。
これらの結果は、アルコールとレッドブルの組み合わせが一時的に脳機能を向上させるものの、長期的には有害な影響をもたらすことを示しています。
特に、若い時期にこのような飲料を摂取することは、脳の発達に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
研究者たちは「エナジードリンクを混ぜたアルコールを大量に摂取すると、分子レベルで海馬(記憶形成に重要な脳の領域)に変化が生じ、海馬の可塑性に永久的な影響を及ぼす可能性がある」と述べています。
参考文献
Mixing energy drinks with alcohol impairs neural functioning in rats, study finds
https://www.psypost.org/mixing-energy-drinks-with-alcohol-impairs-neural-functioning-in-rats-study-finds/
元論文
Mixing energy drinks and alcohol during adolescence impairs brain function: A study of rat hippocampal plasticity
https://doi.org/10.1016/j.neuropharm.2024.109993
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部