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これらのmiRNAは遺伝子の発現を調節し、適切なタイミングで遺伝子のスイッチを入れる役割を担っています。
SRYがY染色体のスイッチならばmiRNAはスイッチに電力を注ぐための「起動キー」と言えるでしょう
特に注目すべきは、「miR-17〜92クラスタ」と呼ばれるmiRNAのグループです。
このクラスタは「miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20a、miR-19b-1、miR-92a-1」の6つの異なる小分子(miRNA)で構成されています。
これらのmiRNAは、生殖腺の発達や性決定において重要な役割を果たしていると考えられていますが、その詳細な影響についてはまだ解明されていません。
そこで今回、デューク大学の研究者たちは、miR-17〜92クラスタに属する6つのmiRNAを欠如させたマウス胚を作成し何が起こるかを調べました。
するとこのmiRNAクラスタが欠如しているマウス胚は、Y染色体を持っていても精巣の発達が阻害され、成長してもオスとしての特徴を形成できませんでした。
SRY遺伝子の発現が遅れ、その結果としてセルトリ細胞の分化が阻害されました。セルトリ細胞は精巣の形成と機能に不可欠な細胞であり、これが適切に分化しないと、精巣そのものが発達しなかったのです。
さらにmiRNAを削除されたオスマウスでは上の図のように「子宮」が体内で生成され始めていたことがわかりました。
(※詳しくは「miR-17〜92クラスタの欠如➔ SRY遺伝子の発現遅延(約12時間)➔ Sox9の適時活性化が失敗➔ セルトリ細胞の分化が遅れるまたは阻害される➔ 精巣が発達せず、卵巣が発達➔ 結果としてメスとしての性決定が行われる」となります)
これらの結果は、Y染色体の遺伝子コード領域を直接削除しなくても、6つの小分子の働きを阻止するだけでオスからメスへの性転換が可能であることを示しています。
この発見は、性分化に関する理解を深め、性決定における遺伝子の役割を再評価する重要な一歩となります。
さらに、性分化に関連する疾患の理解や治療法の開発に新たな道を開く可能性があります。
たとえば子宮移植の前や子宮移植と並行してこの知見を応用することで、身体の順応を助ける新たな治療法が期待されます。
miRNAの制御を利用した性転換や性決定の調整は、医学的に画期的な進展をもたらすかもしれません。
参考文献
Scientists made mice with Y chromosomes female by deleting just 6 tiny molecules
https://www.livescience.com/health/sex/scientists-made-mice-with-y-chromosomes-female-by-deleting-just-6-tiny-molecules?utm_source=Newswav&utm_medium=Website
元論文
Complete male-to-female sex reversal in XY mice lacking the miR-17~92 cluster
https://doi.org/10.1038/s41467-024-47658-x
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部