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現実世界にも存在しますが、『スター・ウォーズ』をはじめとする数々のSF作品によく登場してきました。
これらのモノホイールは運転手によって操作される必要がありますが、アメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)に所属するキム・ジュヒョン氏ら研究チームは、運転手の必要ないモノホイール型のロボットを開発しました。
「リングボット(Ringbot)」と名付けられたそのロボットは、1つの車輪で前進できるだけでなく、2本の足でバランスを取ったり方向転換したりします。
研究の詳細は、2024年2月6日付の科学誌『IEEE Transactions on Robotics』に掲載されました。
目次
今回の開発にあたって、キム・ジュヒョン氏ら研究チームは、『スター・ウォーズ』に登場するグリーヴァス将軍の乗り物にインスピレーションを受けたようです。
これは数々のSF作品に登場し、現実にも存在するモノホイール(1つの車輪の内側に運転手が収まる乗り物)です。
ただし、グリーヴァス将軍が使用している乗り物は、モノホイールから4本の足が伸びており、車輪で前進するだけでなく、足を使って走ったり方向転換したりできるようです。
現実世界のモノホイールは、進行方向には安定しますが、水平方向のバランスを取るのが難しいことで知られています。
そのためSF作品とはいえ、「足を追加する」というこのアイデアはモノホイールの欠点を補うのに役立つ可能性があります。
実際、モノホイールの運転手は、停止時に自分の両足を使って車体を支えたり、方向転換したりしています。
研究チームは、これら運転手の足の動きをよく観察し、その動きをロボットに行わせることにしました。
これによって完成したのが、1つの車輪から2本の足が生えたモノホイール型ロボット「リングボット(Ringbot)」です。
今回開発されたリングボットは、直径515mmの車輪と、内側に組み込まれた2つのモジュールで成り立っています。
モジュールは小さな歯車を介して、車輪のリム(外縁部にあって車輪の全体的な形状を支えるための硬い性質を持った円環)と嚙み合っており、モジュールが歯車を回転させることで車輪も回転し、前進します。
研究チームは、この構造を「回し車を走る2匹のハムスターのようだ」と述べています。
2つのモジュールがまるでハムスターのように外側の車輪を回転させるというわけですね。
これだけであれば、前進するだけのモノホイールです。
しかし、リングボットでは、2つのモジュールに足(ロボットアーム)が1本ずつ備わっており、様々な役割を果たすことができます。
例えば、走行時には両足を左右に伸ばしてバランスを取ります。
そして曲がる時には、片方の足だけを伸ばして重心を移動させることができます。
また停止時には両足を地面につけて倒れないようにし、その場で足だけを使って方向転換することも可能。
さらに完全に倒れた状態から2本の足を使って車体を起こすこともできるようです。
器用に足を動かしている映像を見ると、それぞれのモジュールに意思があるかのようですね。
ちなみに、これまでに行われたテストでは、リングボットは人間のオペレーターによって遠隔操作され、最高速度5km/hで走りました。
研究チームは、将来的にはこのリングボットにカメラやセンサー、GPSなどを取り付けたいと考えているようです。
そのように進化したリングボットであれば、混雑した市街地を自律的に走り抜けるなど、配達業務での使用が可能かもしれません。
キム・ジュヒョン氏も、「大都市では、狭い場所でも移動できる自転車やバイクが交通渋滞を躱しており、配送ニーズを満たしています」と語っており、将来、リングボットがその代わりを担う可能性があると考えています。
このように、現代ではSF作品にインスピレーションを受けた技術がどんどん実現しています。
「SF作品と現実の境目が曖昧になっている」のかもしれませんね。
参考文献
Star-Wars-inspired robot rolls on a round body and uses legs to steer
https://newatlas.com/robotics/star-wars-ringbot-robot/
A monocycle robot with two legs
https://ece.illinois.edu/newsroom/monocycle-robot
元論文
Ringbot: Monocycle Robot With Legs
https://doi.org/10.1109/TRO.2024.3362326
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。