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今回の海洋探査は、日本財団と英国のネクトン財団によって設立された海洋生物探査プロジェクト「オーシャン・センサス(Ocean Census)」の主導で行われました。
オーシャン・センサスは、汚染・乱獲・気候変動などで未知の海洋生物が失われる前に、10年以内で10万種の新種を記録するという目標を掲げています。
その一環である本調査は今年2月に、ニュージーランド南東沖に広がる海底地形「バウンティトラフ(Bounty Trough)」を対象に3週間の期間で実施されました。
バウンティトラフは長さ約800キロに及び、地質学的には注目されていましたが、海洋生物の調査はほとんど行われていません。
本調査にはオーシャン・センサスの研究員のほか、ニュージーランド国立大気・水圏研究所(NIWA)、ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ(Te Papa)のメンバーを含む計21名が参加し、NIWAの調査船タンガロア号に乗ってバウンティトラフへ向かいました。
チームはバウンティトラフの3Dマッピング(上図)を作成した後、3週間の間に延べ1800近くの生物サンプルを捕獲しています。
一部の標本は水深4800メートルという深さから回収されました。
では、その未知の生物たちを一挙にズラリと見てみましょう。
新たに回収された生物サンプルの中には研究者の見知らぬ生き物がたくさん紛れていました。
そのうち100種以上は科学的に記載されていない新種の可能性があると見られています。
チームが研究室に持ち帰って分析したサンプルのうち、すでに新種と確認されたのは、軟体動物が数十種、魚類が3種、甲殻類が1種、頭足類が1種などです。
例えば、こちらは頭足類であるイカの新種と見られます。
体に点々と見られる呪印のような模様が特徴的ですね。
次にこちらは”海の豚(sea pig)”の愛称で知られる「センジュナマコ(学名:Scotoplanes globosa)」の一種です。
丸々と太った肌色のボディが子豚を思わせます。
また、完全に地球外生命体にしか見えないような未知の生物も捕獲されました。
見た目は映画で有名な顔に飛びついてくるエイリアンのようですが、これは「クーマ目(学名:Cumacea)」という甲殻類の新種と見られるとのこと。
ヨコエビなどに近い生物だといいます。
それから魚類の新種も今のところ3種が特定されました。
どれも深海に生息しているため、水面近くで見られるような魚とは違い、体表面がぬらぬらと不気味に照りついています。
こちらは水深2700メートルで回収された「ゲンゲ科(学名:Zoarcidae)」という魚類の一種です。
こちらの珍妙な魚は今にも溶け出しそうな顔をしています。
この魚も新種の可能性があるようです。
さらにチームは1つの不可解な生物を発見しました。
当初は新種のイソギンチャクがヒトデだろうと考えていましたが、調べてみるとそのどちらでもないことが分かったという。
現時点では「八放サンゴ(学名:Octocorallia)」の新種あるいは新属と推測されていますが、まったく新しい生物グループの可能性もあるとのことです。
それがこちら。
見た目はかなり地味目ですが、もしかしたら世紀の大発見となる生物かもしれません。
以上が新種と見られる生物たちですが、これらは今回見つかったサンプルのほんの一部でしかありません。
オーシャン・センサスの科学ディレクターであるアレックス・ロジャース(Alex Rogers)氏は「すべての標本が調査される頃には、100種以上の新種が特定されているでしょう」と述べています。
海洋生物は現在、年間に約2200種が新種として見つかっており、そのスピードは探査技術の向上とともに今後さらに加速すると思われます。
私たちが知っている海洋生物は氷山の一角に過ぎないのです。
参考文献
100 NEW OCEAN SPECIES DISCOVERED IN NEW ZEALAND
https://oceancensus.org/100-new-ocean-species-discovered-in-new-zealand/
New ocean species discovered in Bounty Trough
https://niwa.co.nz/news/new-ocean-species-discovered-in-bounty-trough
New squid alert! 100+ species discovered off the coast of New Zealand
https://www.popsci.com/science/new-marine-species-discovered/
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。