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しかし、可食部200gというのは、リンゴであれば1個分に相当し、毎日食べるのは簡単ではありません。
そこで一部の人は、100%のフルーツジュースを選択します。
コップ1杯(約200ml)がリンゴ1個分に相当するので、簡単に推奨摂取量をクリアできてしまうのです。
ものの数秒で果物に含まれるビタミン、抗酸化物質、ポリフェノールなどを摂取できると考えると、非常に効率的に思えることでしょう。
しかし、果物を直接食べるのではなく、フルーツジュースを飲むことには落とし穴があります。
今回、グエン氏ら研究チームは、100%フルーツジュースを毎日飲む子供や大人にはどんな影響があるのか、メタ分析を行っています。
彼女らは、これまでに行われた42件の研究の結果を統合し、100%フルーツジュースを飲むことと体重増加にどんな関連性があるのか分析したのです。
これには子供(計4万5851人)を対象とした17件の研究と、成人(計26万8095人)を対象とした25件の研究が含まれていました。
ちなみに研究者によると、「メタ分析の良いところは、小規模な研究をまとめて、あたかも1つの大きな研究であるかのように分析できることです」と述べています。
メタ分析の結果、子供の場合、100%フルーツジュース摂取量と体重増加の間には、相関関係が認められました。
そして1日あたりの100%フルーツジュース摂取量が、約240ml増加するごとに、BMI(肥満度を表す体格指数)が0.03高くなることが示されました。
成人においては、子供の場合ほど明確な結果とはなりませんでした。
当初、カロリーの測定方法にばらつきがあったため、摂取量と体重増加に関する有意な関連性は認められなかったのです。
しかし、測定方法を調整した再分析では、大人でも、1日あたりの100%フルーツジュース摂取量が約240ml増加するごとに、BMIが0.02高くなるという結果が得られました。
BMIは 体重(kg) ÷ 身長(m)2で表され、BMIの標準は18.50~25.00です。
例えば、体重50kgで、身長1.6mの人は、19.50となり標準体型と言えます。
仮にこの人の体重が10kg増えたとしても、BMIは23.43であり、標準体型内に収まります。
そう考えると、フルーツジュース240mlごとにBMIが0.02もしくは0.03増えることは、非常に些細な問題に思えるかもしれません。
しかしある研究者は、フルーツジュースを飲む習慣のある人は、1日にもっと多くの量を飲む傾向があると指摘しています。
確かに誰かが、倍量である500mlの100%フルーツジュースを飲んでいたとしても不健康だとは思いませんね。
しかし、それだけでもBMIは0.04~0.06増えることになります。
しかもリンゴジュースであれば、これだけで250kcal(白米茶碗1杯分のカロリー)を摂取することになり、体重が増加するのも不思議ではありません。
また100%フルーツジュースには、製造の過程で、本来果物に含まれている食物繊維が取り除かれているというデメリットがあります。
そして瞬時に多くの量を摂取できるため、血糖値が急上昇してしまうのです。
確かに、100%フルーツジュースを飲むことは、あまり健康的ではない果物の摂取方法だと言えますね。
そのため研究チームは、結論として、肥満を防ぐためにも100%フルーツジュースの摂取には、いくらか制限が必要であることを認めています。
特に子供の健康を気遣う親たちは、子供にフルーツジュースを与えるのではなく、適切な量の果物を与えるべきでしょう。
厚生労働省が推奨する果物の摂取量を満たすために、「毎日フルーツジュースを飲む」のではなく、「毎日果物を食べる」と良いのです。
もちろん、「フルーツジュースをたまに楽しむ」くらいであれば、大人でも子供でも問題はないはずです。
参考文献
Evidence that 100% fruit juice consumption is associated with a BMI gain in children
https://www.news-medical.net/news/20240117/Evidence-that-10025-fruit-juice-consumption-is-associated-with-a-BMI-gain-in-children.aspx
元論文
Consumption of 100% Fruit Juice and Body Weight in Children and Adults
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2813987
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。