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銀河ぬーべーは、一般的な銀河と比べて非常に暗く、大きな範囲に広がっており、まるで「薄い雲」または「幽霊」のような存在だったため、これまでの様々な観測では発見されていませんでした。
このような観測上、限りなく透明に近い銀河は「超拡散銀河(UDG:Ultra-Diffuse Galaxy)」と分類されます。
特に、ぬーべーは、他の超拡散銀河の10倍暗い矮小銀河であり、同程度の星を持つ銀河と比べると10倍以上の領域に広がっているといいます。
つまりぬーべーは、星の密度が異常に低い小さい銀河なのです。そのためこの銀河は「超拡散矮小銀河」と呼ばれます。
研究チームは、その異常性を、他の有名な天体とぬーべーを比較して、次のように述べています。
「銀河ぬーべーは、天の川銀河の3分の1の大きさですが、質量は小マゼラン雲と同じくらいです」
また、一般的に見られる銀河では、星の密度が内側の領域で最も大きく、中心から外側へと離れるにつれて密度が急速に小さくなっていきます。
しかしモンテス氏によると、「ぬーべーの星の密度は全体でほとんど変化せず、それゆえ、ぬーべーは非常に暗い」ようです。
この超拡散矮小銀河であるぬーべーは、次の経緯で発見されました。
最初、研究チームは、可視光で全天の一定の領域を測定して宇宙地図を作るプロジェクト「スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)」によって収集された画像を再分析した時に、何年も気づかれなかった小さな異常を発見しました。
その後チームは、アメリカのウェストバージニア州にある世界最大の可動式電波望遠鏡「グリーンバンク望遠鏡(GBT)」と、スペインのラ・パルマ島にある口径10.4mの反射式望遠鏡「カナリア大望遠鏡(GTC)」を使用して画像を取得しました。
その結果、この小さな異常が、実は「星が拡散した矮小銀河」だと判明したのです。
ちなみに、このぬーべーは、現段階で地球から3億光年はなれた位置に存在すると推定されていますが、発する光が弱く正確な距離を測るのが困難なため、今後、他の望遠鏡を用いてその正確性を確かめる予定です。
銀河ぬーべーの存在は、天文学者たちを困惑させています。
銀河ぬーべーは、全体的に拡散しており、中心に質量がほとんどないにも関わらず、銀河として1つにまとまっています。
一見したところ、ぬーべーには相互作用も無ければ、奇妙な性質を示す他の兆候も見られないようです。
天文学者たちは、既存の宇宙モデルや様々なシナリオに当てはめたとしても、ぬーべーがどのようにして1つにまとまっているのか説明できません。
例えば、一般的に受け入れられている「コールドダークマター(SOD)モデル」では、ダークマターの粒子が非常に遅い速度で動き、銀河や銀河団などの成長に影響を与えると考えられています。
この理論により、宇宙の大規模な構造を説明することはできますが、ぬーべーのような存在を説明することはできないのです。
研究チームは、ぬーべーの構造を説明する新たな説として、「ダークマターを構成する粒子の質量は極めて小さい可能性がある」と述べています。
もしこれが本当なら、「ダークマターが量子物理学の特性を銀河規模で証明したことになる」のだとか。
もちろん、これは仮説の1つに過ぎませんが、現在研究チームは、理解をより深めるために、ぬーべーのような「暗い銀河」を新たに探しています。
銀河ぬーべーを取り巻く「不思議な」物語は、まだまだ続きそうです。
参考文献
Nube, the almost invisible galaxy which challenges the dark matter model
https://www.iac.es/en/outreach/news/nube-almost-invisible-galaxy-which-challenges-dark-matter-model
‘We do not understand how it can exist’: Astronomers baffled by ‘almost invisible’dwarf galaxy that upends a dark matter theory
https://www.livescience.com/space/cosmology/we-do-not-understand-how-it-can-exist-astronomers-baffled-by-almost-invisible-dwarf-galaxy-that-upends-a-dark-matter-theory
元論文
An almost dark galaxy with the mass of the Small Magellanic Cloud
https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2024/01/aa47667-23/aa47667-23.html
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。