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これまでの研究では、子供たちが特にネガティブな感情(悲しみ、怒り、退屈など)に反応してより多く食べることが明らかになっています。
子供たちは、空腹ではないとしても、食の快楽から喜びを得てネガティブな感情を軽減させようとするのです。
食べ物を使って不機嫌な子供をあやす親がいるのは、こうした傾向が大いに関係しているでしょう。
とはいえ以前の研究のほとんどは、悲しみや怒り、退屈などを「ネガティブな感情」と一括りにして調査してきました。
そこで今回、ストーン氏ら研究チームは、特定の感情を調査するうえで、比較的コントロールしやすい「退屈」に焦点を当てました。
この研究では、4~5歳の子供119人を対象に、その親たちに子供の性格や食習慣を尋ね、子どもたちの行動について調査しています。
実験は、お昼時か夕飯時の時間帯に行われ、招いた親子に食事を振る舞いました。
子どもたちはこの時点で満腹になっています。
次に、子どもたちに研究者と一緒にパズルをさせます。
1つのグループは何の問題いもなくクリアさせますが、退屈グループに分けられた子供たちには、一緒のパズルをしている研究者が「誰か来たので待ってて」と、しばらく離席してパズルを中断し、退屈な気分にさせました。
その後子供たちには、スナック菓子やおもちゃが与えられ、「お菓子を食べてもいいし、おもちゃで遊んでもいい」と伝えられました。
4分後、スナック菓子とおもちゃは片づけられ、子供たちが4分間で摂取したカロリーが計算されました。
はたして子供たちは、4分間でどれだけのお菓子を食べたのでしょうか?
実験の結果、全体として、退屈を感じている子供たちは満腹でも95kcal食べたのに対し、ニュートラルな気分の子供たちは59kcalしか食べませんでした。
つまり、満腹状態の4歳の子供は、退屈することで平均79%多くのカロリーを摂取すると分かったのです。
ちなみに、退屈するとカロリー摂取量が多くなる傾向は、子供の性格や親の行動習慣で変化することも分かりました。
一部の子供たちは、アンケート調査から「感情的な性格を持っており、親が食べ物を使って慰める習慣がある」と分かりました。
そしてその子供たちは、ニュートラルな気分の時は21kcalしか食べませんでしたが、退屈すると104kcal摂取しました。
気分が落ち着いているとあまり食べませんが、退屈になることで5倍も多くのカロリーを摂取する傾向があったのです。
こうした結果を見て、ある人は、退屈とニュートラルの感情の摂取カロリーの差が100kcal未満であることから、あまり大きな影響だとは考えないかもしれません。
しかし3~5歳に必要な1日の摂取カロリーが1250~1400kcalであることを考えると、100kcalの差は決して小さくありません。
しかもこれがたった4分間で生じた差であることを考慮すると、1日、1週間、1年を通して積み重なる摂取量の違いは馬鹿にできないでしょう。
そして「退屈な時についつい食べる」傾向が子供の時に形成されてしまうと、人生を通して健康に悪影響を与える可能性が出てきます。
では、このような傾向とどのように戦うことができるでしょうか?
親は子供たちを退屈させないよう頑張る必要があるのでしょうか?
そうではありません。ストーン氏は次のように述べています。
「退屈を経験することは、子供の自意識と創造性を発達させるために重要であるため、それを避けることはお勧めしません。
代わりに、子供は退屈だったとしても、食べ物に頼るべきではないことを学ぶ必要があります。
親は、子供が退屈を感じた時に子供の注意を食べ物から逸らすようにしたり、すぐに食べ物に頼ることができない環境を整えたりすべきです」
親は「退屈そのもの」に対処するのではなく、「子供が食べ物に頼ることが無いよう」サポートしていくべきなのです。
もちろん親でなくとも、これらの点は意識すべきです。
本当に子供たちのことを考えているなら、たとえ善意であっても、「とりあえずお菓子を与えたくなる」気持ちを抑えるべきでしょう。
参考文献
Children as young as four eat more when bored https://www.aston.ac.uk/latest-news/children-young-four-eat-more-when-bored元論文
Emotional eating following a laboratory mood induction: The interaction between parental feeding practices and child temperament https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0950329323002021?via%3Dihub