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だからこそ、スーパーや街中で人とすれ違う時には、少しモヤモヤするかもしれません。
激しく息を吐いたり吸ったりしているランナーがそばを通ると、いくらか不安になることもあるでしょう。
実際、直径5~100μmの大きなエアロゾル粒子は空気中に数分~数十分漂い、直径5μm未満の粒子は数時間漂うと考えられています。
それらを吸引することで、空気感染を引き起こす恐れは十分にあるのです。
では、そのような「日常生活で遭遇する感染リスク」をどのように低減できるでしょうか?
今回、浅井氏ら研究チームは、口部にエアロゾル粒子噴出装置を装備した移動型マネキンと、粒子の位置を追跡して計測する「粒子追跡流速測定システム」を用いて、対面通過時におけるウイルス暴露リスクを分析しました。
マネキンは実際の状況を想定して、通過速度で5 km/h(歩行)、10 km/h(ジョギング)、15 km/h(ランニング)、20 km/h(スプリント)の4条件、噴流量で30 l/min(歩行)、55 l/min(ジョギング)、80 l/min(ランニング)の3条件が試されました。
その結果、対面通過時のエアロゾル粒子数のピークは、すべての条件において通過後5秒以内に発現し、その後急速に低下することが明らになりました。
そして通過速度が大きくなるほど、ピークは小さくなり、エアロゾル粒子数も減少する傾向がありました。
これは通過速度の増大により、噴流と対流の相対速度が増加し、拡散が促進されるからだと推定されています。
例えば、上図のグラフは「換気なし、噴流量30 l/min」条件の速度ごとの結果を表しています。
どの速度でもピークが5秒以内であることがはっきりと分かります。
そしてエアロゾル粒子数は、通過速度の小さい歩行で明らかに多く、ジョギングやランニング、スプリントと移動速度が大きくなっていくにつれて極端に少なくなっていました。
これを見ると走っている人とすれ違うときのリスクは、比較的小さいと考えられそうです。
ちなみに、換気の条件(あり・なし)にかかわりなく、エアロゾル粒子数のピークは通過後5秒以内でした。
ただし換気ありの方が、粒子数は顕著に少ないことも分かっています。そのため室内と屋外などでは、すれ違いの呼気で受ける影響が異なってくるでしょう。
これらの結果から、すれ違いざまのウイルス感染リスクを低減させるには、通過後5秒以内を意識することが大切だと言えます。
そのため例えば人とすれ違う際は、「5秒間呼気を中断する」「5秒間は1m以上の距離をあける」「5秒間は進行方向に対して横方向にコースを移動する」などの対策が有効なようです。
そして研究チームによると、「これらの結果は、インフルエンザなどの様々なエアロゾル粒子を媒介とする他の感染症にも応用できる」と期待されているようです。
ウイルスを完全に避けることは難しいですが、バカバカしい対策のように思えても、人とすれ違う際「5秒間息を止めてみる」というのは意外と有効な方法かもしれません。
参考文献
すれ違いざまのウイルス空気感染リスクのピークは通過後5秒以内 https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20231019141500.html元論文
Peak risk of SARS-CoV-2 infection within 5 s of face-to-face encounters: an observational/retrospective study https://www.nature.com/articles/s41598-023-44967-x