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大気には、化合物、金属など様々な種類の汚染物質が含まれています。
私たちは、PM10(直径10μm)と呼ばれる比較的大きな粒子でさえ簡単に吸入してしまいます。
微小粒子状物質「PM2.5(直径2.5μm)」であれば、肺の奥から血流に達する可能性さえあるのです。
今回研究チームは、車の排気ガス、ブレーキパッドやタイヤの摩耗に由来する粒子を計測し、それら汚染粒子からどのように身を守ることができるか実験しました。
彼らが着目したのは、生垣です。
生垣とは、庭や室内など敷地内が見えないようにするために植えられた植栽や樹木のことです。
コンクリートの塀などとは違って、爽やかで美しいイメージを与えられるのがポイントでしょう。
そして、この生垣に更なるメリットが見つかりました。
なんと生垣には、大気汚染から私たちを守る効果があったのです。
2019年、研究チームは、イギリス・マンチェスターの小学校3校に頭の高さまである生垣を設置しました。
そして夏休みの間、生垣のない4番目の学校と比較して、学校内に侵入する汚染粒子の量がどのように変化するか調査したのです。
それぞれの生垣は次のように異なっていました。
校庭の内側と外側の空気を分析したところ、ベイスギだけを植えた2番目の学校が、最も汚染物質をブロックすると分かりました。
この校庭では、ブラックカーボン(黒色炭素。排気ガスなどが原因で発生する大気汚染物質)の49%がブロックされていたのです。
また、車両が通過することで放出されるPM2.5およびPM1微粒子が26%もブロックされていました。
ちなみに、1番微粒子を効果的にブロックしたのはセイヨウキヅタを植えた学校でしたが、ブラックカーボンに対しては効果がありませんでした。
植物をミックスした学校は、ベイスギだけを植えた2番目の学校より劣る結果となり3番目でした。
これらの結果から、生垣には大気汚染物質の流入をブロックする働きがあること、そして植物の種類によって効果が大きく異なることが分かりました。
では、今回の実験でベイスギが効果的に汚染物質をブロックできたのはなぜでしょうか?
研究チームは、ベイスギの大量で小さく粗い葉がフィルターのように機能し、汚染粒子を捉えたからだと考えています。
キャッチされたそれら粒子は、雨が降ることで洗い流され土壌や排水溝に流れ込みます。
そしてリセットされたベイスギの葉は、再びフィルターとして多くの粒子を捉えるのです。
同研究チームのバーバラ・マーハー氏(Lancaster University)も、「ベイスギの生垣がうまく機能するのは、この種の葉が何百万もの小さな粗い波上の突起を形成しており、それらが浮遊する微粒子にぶつかって、凹凸でキャッチできるからである」と述べています。
対照的に、セイヨウキヅタのような種の葉は、滑らかでワックス状の表面を持っているため、微粒子をキャッチするのにあまり効果的でないのだとか。
今回の実験は学校を対象に行われましたが、その結果は他の場所でも生垣が役立つことを示唆しています。
もし皆さんの自宅が、国道沿いなど、交通量の多い道路に面しているのであれば、表面の粗い葉を持つ植物を生垣として植えてみてはいかがでしょうか。
景観を損ねることなく効果的に、排気ガスの悪影響から自分や家族を守ることができるかもしれません。
参考文献
New evidence shows planting around school playgrounds protects children from air pollution https://www.lancaster.ac.uk/news/new-evidence-shows-planting-around-school-playgrounds-protects-children-from-air-pollution Study shows how planted “tredges”can protect children from air pollution https://newatlas.com/environment/tredges-protect-children-air-pollution/元論文
Efficacy of green infrastructure in reducing exposure to local, traffic-related sources of airborne particulate matter (PM) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969723052233