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このような銀河は「極リング銀河(きょくりんぐぎんが)」と呼ばれており、内側の銀河に対して垂直に回転する外側のリングを持っているようです。
そして最近、極めて稀な存在だった極リング銀河の新たな仲間が発見されました。
カナダ・クイーンズ大学(Queen’s University at Kingston)に所属する天文物理学者のネイサン・デグ氏ら研究チームが、西オーストラリア州の電波望遠鏡「ASKAP」を用いて、2つの極リング銀河「NGC 4632」「NGC 6156」を観測したのです。
それらは宇宙のリボンに包まれたような神秘的で美しい見た目をしています。
報告の詳細は、2023年9月13日付の科学誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に掲載されました。
目次
極リング銀河とは、ガスや星々からなる外側のリングを持つ銀河であり、そのリングは中心の銀河に対して「極軌道」で回転します。
極軌道とは、銀河面に対して垂直に回転することを言います。
例えば、人工衛星は地球に対して極軌道を取る場合があり、赤道に対して直角の軌道を持っています。
極リング銀河の場合も同様に、外側のリングの回転方向が直角になっているのです。
この何とも珍しい銀河は、1980年代にはいくつか特定されており、「NGC 4650A」などが有名です。
現在では100個以上の極リング銀河が発見されていますが、どうしてこのような天体が生じたかについては、未だ議論が続いています。
現在のところ、最も有力なのは、「2つの銀河の衝突」説です。
銀河団の密集地域では、銀河同士が衝突することも珍しくありません。
そのため極リング銀河は、小さな銀河が大きな銀河に対して直角に衝突することで、小さな銀河が破壊されてリング構造を形成したと考えられているのです。
まだまだ謎の多い銀河ですが、この度、新たに2つの極リング銀河が発見されました。
デグ氏ら研究チームは、西オーストラリア州の電波望遠鏡「ASKAP」を用いた国際プロジェクト「WALLABY」の調査を行っていました。
WALLABYの目標は、南の空にある数十万の銀河を調査し、そのガス分布をマッピングすることです。
そしてこの最初の小規模な調査として600個の銀河の水素ガスを調べたところ、2つの銀河「NGC 4632」「NGC 6156」が、実は極リング銀河だったと判明したのです。
NGC 4632は、5600万光年離れたところにあり、これまでごく普通の渦巻銀河だと考えられていました。
ところが今回、水素ガスを検出できる電波望遠鏡を用いて観測したところ、NGC 4632を囲む水素の巨大なリングを見つけることができたのです。
前述のとおり、極リング銀河の特定自体は初めてではありません。
しかし、電波望遠鏡ASKAPを用いて、普通では見えない水素のリングを持つ極リング銀河が判明したのは、NGC 4632が初めてです。
同様に、1億5000万光年離れたところにあるNGC 6156も、小さなガスのリングを持つ可能性があると分かりました。
これらの事実は、普通の銀河のように見えてもASKAPのような望遠鏡でなければ見えないガスのリングをもった極リング銀河が、宇宙には数多く存在している可能性を示唆しています。
デグ氏も次のように述べています。
「この発見によって、近くの銀河の1~3%が、ガス状の極リングを持つ可能性が示されました。
これは光学望遠鏡が示すものよりはるかに多い割合です。
極リング銀河は、これまで考えられていたよりも一般的な存在なのかもしれません」
神秘的で美しい極リング銀河は極めて珍しい存在でしたが、もしかしたら私たちに見えていなかっただけで、これからどんどん発見されていくのかもしれませんね。
参考文献
Discovery of two potential Polar Ring galaxies suggests these stunning rare clusters might be more common than previously believed.元論文
WALLABY pilot survey: the potential polar ring galaxies NGC 4632 and NGC 6156