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ウミウシは全世界では5000~6000種類いるとされ、可愛らしいものから神秘的なものまでさまざまです。
日本近海でも約1400種が生息すると言われており、毎年のように新種が発見されています。
実はウミウシという言葉は生物学的な分類ではなく、あくまで総称。
貝殻が縮小し、体内に埋まってしまったり、消滅してしまった生き物が総じてウミウシと呼ばれているため、色だけでなく形も非常に多彩です。
それではここからウミウシの中でも人気のあるユニークな形のものを3つ紹介します。
ゴマフビロードウミウシはウサギのような見た目で「sea bunny(海のウサギ)」と呼ばれ親しまれています。
ふわふわの毛のように見える部分は絨毛状の小さな突起で感覚器官として機能しています。
頭にある耳のような大きな2つの突起は、鼻のような機能を持つ器官で、餌や仲間を見つける役割を持っています。
日本近海に広く生息しており、最初にこのウミウシを見つけたのも日本人です。
平均体長が約1㎝と小さく、見た目も可愛らしいのですが、実は猛毒を持っている非常に危険な生き物です。
ウデフリツノザヤウミウシは地の色が鮮やかな山吹色で突起の先端のみ黒色というあの有名ゲームキャラクターに似た配色です。
生息地はインド・西太平洋となっていますが、日本近海でもたびたび目撃されており、ダイバーたちの間では「ピカチュウウミウシ」の名で親しまれています。
体長は4~6㎝と少し大き目で見つけやすいのですが、ゴマフビロードウミウシ同様強い毒性を有しているため触らないようにしましょう。
アオミノウミウシは羽を広げたような神秘的な形と鮮やかな青色が魅力で「ブルーシードラゴン」と呼ばれています。
ウミウシの多くは海底に生息していますが、このウミウシは遠洋性でカツオノエボシなどのクラゲや漂着物にしがみついて海面を浮遊しています。
体長は2~5㎝と小さめではあるものの海面を漂っているため潜らなくても観察できる人気品種です。
しかし、ご存じの通りカツオノエボシは猛毒を持つクラゲであり、それを食しているアオミノウミウシもまた猛毒を持っています。
これまでご紹介してきたようにウミウシには毒を持つ品種も多く、水族館であまり見られない1つの原因となっています。
しかし実は毒以外にもウミウシを飼育しづらい理由があるのです。
ここでウミウシの生態について改めておさらいしておきましょう。
前述の通りウミウシは貝殻を失った貝の仲間です。
殻を持たない分、防御力が低いことから、捕食されないように鮮やかな体色で「食べたら危険」だとアピールしているのだといいます。
実際、ウミウシはクラゲなど食べた相手の毒を体に取り込み、攻撃してきた捕食者に対して放出することができます。
取り込めるのは毒に限りません。
藻類を食べるウミウシは葉緑素を体内に取り込み、光合成までできるというのだから驚きです。
ウミウシが飼育できない一番の要因はその複雑な食性にあります。
先ほど挙げたクラゲや藻類をはじめイソギンチャク、ヒトデなど様々で、中にはウミウシを食べるウミウシもいるのです。
そして多くのウミウシが専食性で、ウミウシの種類によって食べるものが異なり、それ以外は食べません。
専食性のウミウシを飼育するとなれば、もちろん人工飼料は使えず、生息地で餌を取ってこなくてはならないため、水族館なども飼育をあきらめるケースが多いそうです。
とはいえ中には複数の餌に対応できる広食性のウミウシもいます。
ヒカリウミウシなどがその1つで、身近な冷凍オキアミなどでも育てることができるため、鳥羽水族館や海響館など複数の水族館で見ることができます。
ウミウシはその複雑な食性から、捕まえても飼育が難しい生き物です。
また、毒を持つことも多いので見つけても触らずに観察するだけにしましょう。
水族館ではあまり見られないウミウシたちも日本近海に多数生息しており、海に潜らなくても海面を漂っていたり、潮だまりに取り残されていることもあります。
意外に身近なウミウシたち、見つけたらぜひその場でじっくり観察してみてくださいね。
参考文献
Nudibranch https://biologydictionary.net/nudibranch/元論文
Incorporated nematocysts in Aeolidiella stephanieae (Gastropoda, Opisthobranchia, Aeolidoidea) mature by acidification shown by the pH sensitive fluorescing alkaloid Ageladine A https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0041010112007167 A Photosynthetic Animal: A Sacoglossan Sea Slug that Steals Chloroplasts https://www.jstage.jst.go.jp/article/cytologia/86/2/86_860203/_article