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正座早見を見ると、物語に出てくる停車場の星座は、ぜんぶ天の川の上にあることがわかります。
夏に星座観察をするときは、はくちょう座、わし座、さそり座、いて座と星空を見ながら『銀河鉄道の夜』のあのシーンはここで起こったのかと想像していくと、より物語への理解が深まって楽しめるはずですよ。
残念ながら、沖縄以外では日本では最終目的地の南十字星は見えないのですが、出発駅の星座であるはくちょう座は、星の並びが飛んでいる白鳥の姿を彷彿とさせる十字の形になっていて、別名「北十字」とも言います。
出発地の「北十字」と終着地の「南十字」で対になるので、やはり最後は南十字となりますね。
ちなみに南十字星は、上の画像の正座早見だと「春の大曲線」をたどり、からす座を通った先にあります。
『銀河鉄道の夜』といえば、印刷博物館で『銀河鉄道』の切符を印刷できるイベントが話題になっています。
懐かしい紙の切符で、昔の活版印刷機を使って銀河鉄道の乗車券を自分で印刷できるというものです。
なぜこのイベントを印刷博物館でやるのかというと、『銀河鉄道の夜』の作中で、主人公のジョバンニが印刷所にて文選工(ぶんせんこう)のアルバイトをしているのが理由のひとつでしょう。
活版印刷とは、活字を組み合わせて作った版(活字組版)にインクを塗って紙に転写する印刷方法のこと。
文選工とは、この活字組版を作るために、多数の活字から指定された文字を探してピックアップし、正しく並べる仕事です。
活版印刷はデジタル印刷(DTP)の発達により、過去の技術となっていますが、味のある印刷物が刷れるので、今でも名刺の印刷などで好む人は多いです。
体験では『銀河鉄道の夜』の切符の印刷に使われる活字組版の現物を見ることもできます。ここからも物語の理解をより深められます。
「銀河鉄道の切符を実際に手にできる!」というだけでなく、理工学に興味がある人にとって、活版印刷機を実際に操作して、動く様子を間近で見られるのは魅力だと思います。
東京都文京区にある凸版印刷が設立した博物館で、印刷文化に関わる多数の資料を集めており、展示物として見物できるほか、活版印刷などを実際に体験できるイベントも行われています。
今回以外にも天文にまつわるイベントを行っており、2018年に、有名なガリレオの『天文対話』など、天文にまつわる印刷物が一堂に会した「天文学と印刷展」が開催された場所でもあります。今年も図録が再販されるほど、盛況でした。
『銀河鉄道』の切符を印刷できるイベントは、8月の第1週から第4週の火・水・木に行われており、『銀河鉄道』に登場する主要な駅を行き先として、週ごとに違う駅を印刷することができます。
第1週は「白鳥停車場」、第2週は「鷲の停車場」、第3週は「小さな停車場」、第4週が「南十字」です。
主人公のジョバンニが訪れた順に、銀河鉄道の最終目的地までとなります。
やはり、1番欲しいのは最終目的地の「南十字」の切符でしょう。作中では、車窓から見える大きな十字架の描写がまるで神聖な墓標にも感じられる、印象的なシーンでした。
ただ、筆者が体験したのは最初の駅の「白鳥停車場(作中では「白鳥の停車場」)」です。旅の始まりとなる駅なので、記憶に残るシーンが多い駅でもあります。
たとえば、はくちょう座のクチバシにあたる星、アルビレオが青い星と黄色い星の2つの星で構成される二重星であることから、天の川の流れを測る装置として、サファイア(碧玉)とトパーズ(黄玉)がくるくる回っている「アルビレオの観測所」として描写されているのは印象深いです。
なお、「小さな停車場」は何駅か作中で明記されていません。話の内容から、いて座かさそり座ではないかと推察されており、この印刷博物館のイベントでは、いて座で設定されています。
物語の中の季節は、ジョバンニが寝転んで空を見上げていたときに天頂にはくちょう座が昇ってきた時間から考えて、お盆頃ではと推察されています。なので、夏の時期にこのイベントをやるのはピッタリというわけですね。
また、印刷するのは「硬券」と呼ばれる昔使われていた紙の切符。硬券は4種類ありますが、今回はもっとも一般的に使用されているA型券です。
印刷がおわったら日付を刻印し、自ら改札鋏(かいさつはさみ)でチョキン、と切符切りをすることもできます。
体験イベントでは、はじめに印刷する切符「硬券」について、鉄道切符の種類や模様のような印刷「地紋」の解説や歴史などについて解説を聞けます。
地紋は鉄道会社ごとに異なり、格式をそろえたり、特殊なインクが使われていて消そうとすると地紋も消えてしまうので、偽造防止の役割もあったのだとか。
解説は聞かずに印刷体験だけも可能ですが、印刷した切符への愛着が増すので、聞くのをおすすめします。
それが終わると、いよいよ活版印刷機を動かして、印刷体験となります。
この活版印刷機は、2019年にJR北海道から寄贈されたもので、近年まで実際に使われていたものなのだそう。
もともとは200ボルトの電源で動いていましたが、今回は手動で動かします。
ハンドルを1回まわすごとに、1枚の切符が印刷されます。1人3回まわして、3枚の切符を入手できます。
切符が機械の中を送られていき、印刷されていくのが外から見てわかります。
印刷した切符は、体験した当日の日付の印字と切符切りを好みで行うことができます。
日付を印字する様子。小学生くらいのお子さんも参加していました。
昔懐かしい、切符鋏(きっぷばさみ)です。切符をチョキンと切ると心地よい音が鳴ります。
筆者は田舎出身ということもあり、幼少時はまだ駅で切符に鋏を入れてもらった記憶がありますが、未経験の人には貴重な昔の体験でしょう。
ということで、1枚は印刷したそのままの状態、1枚は印字のみした状態、1枚は印字と切符切りをほどこした3タイプで作成しました。
注意点は刷りたてなので、印刷部分を持つと印刷がにじむ危険があること。なるべく端っこを持って、印字も切符切りも行いましょう!
できた切符は、キーホルダーにしたり、パスケースの中に入れたりしても気分があがっていいと思います。
2023年8月24日までの(火・水・木)に実施されており、博物館の入場料のみでイベント参加費は無料です。
時間は15:00〜15:30で、所要時間は30分〜1時間ほどです。
予約は不要で、地下1階のチケットカウンターで体験に参加したいというと先着順に整理券がもらえます。定員はないので安心して参加できますよ。
詳細はこちらに掲載されています。
せっかくなら、まるで『銀河鉄道』に見える、スターリンク衛星を観測してみましょう。条件が良ければ、都会でも肉眼で見えます。
スターリンク衛星がいつどこで見られるのかは、こちらのサイトから検索することができます。
近日5日間で、「よく見えるタイミング」「まあまあなタイミング」「あまり良くないタイミング」が提示されます。「よく見えるタイミング(Timings with good visibility)」のところに表示される、時間と方角と高度を参考に観測しましょう。
動画の撮影や編集が得意な人なら、スターリンク衛星を撮った動画を電車の走る音と組み合わせた映像を作るのもおすすめです。実際に見せてもらったことがあるのですが、物語の再現度はかなり高かったです。
運が良ければ、天の川の中を通るのが見られるので、より想像をかきたてられます。
アニメ・漫画好きだと『銀河鉄道999』のテーマソングと合わせるのもありかと(著作権には注意)。
夏の星座を観察するときには、こちらも注目してみてくださいね!
参考文献
印刷博物館 https://www.printing-museum.org/ findstarlink.com https://findstarlink.com/