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ラヴィン氏は「研究主任のジュリアン・キミグ(Julian Kimmig)氏に見せましたが、彼も当惑した顔で『そんなものは見たことがない』と話した」と述べています。
研究室に持ち帰って、他の同僚たちとも化石の正体について話し合いましたが、誰も見当がつきませんでした。
カンブリア紀中期に存在した軟体動物ウィワクシア(Wiwaxia)ではないかとの意見も出ましたが、ウィワクシアは今日のカナダと中国からのみ出土し、この地域に固有の生物ではありません。
またサイズや形態の特徴も今回の化石とは大きく異なります。
そこでチームは走査型電子顕微鏡やX線分析を用いて、化石を詳しく調べてみることにしました。
チームは当初、花びらか刃の形状が単に鉱物の結晶なのではないかと疑っていましたが、分析の結果、それらが生物の背中に並んだものであることが正式に特定されました。
そして最終的に、この謎の生物は科学的に知られていない環形動物の一種であることが判明したのです。
環形動物は体がいくつもの節に分かれたワーム状の生き物で、陸上・淡水・海水を合わせて約2万1000種が知られています。
しかし今回の生物は環形動物に属するものの、種属ごと全く新型のモンスターでした。
この結果を受けて、第一発見者のラヴィン氏は生物の名付け親になる権利を得ました。
「過去にも新種の記載に関わったことがありますが、私自身が種の名前を付けるのはこれが初めてです」と話します。
そしてラヴィン氏が考え出した学名は「シャイフルディア・シュリケニ(Shaihuludia shurikeni)」でした。
属名のシャイフルディア(Shaihuludia)は、フランク・ハーバートの傑作SF小説『デューン砂の惑星』に登場する惑星アラキスの巨大サンドワームに由来します。
アラキスの砂の下に潜むサンドワームは、宇宙で最も貴重な物質である香料(スパイス)を生産し、原住民フレメンから「シャイ・フルード(Shai-Hulud)」と呼ばれています。
「私は大のSFオタクで、調査当時は『デューン』の映画に夢中になっていたので、その名前が最初に浮かんだのです」と氏は話しました。
それから種小名のシュリケニ(shurikeni)は、放射状の刃の形状が日本の伝統的な武器である「手裏剣」に似ていることからとられています。
また本研究の成果は、北アメリカにおけるカンブリア紀の環形動物の発見自体がきわめて稀であるため、当時の生態系の理解を進める上でも貴重であるといいます。
今後、新たなシャイフルディア・シュリケニの化石が見つかれば、彼らがどのような環境で何を食べて生き、いつまで存在したのかが分かるでしょう。
参考文献
PAPER OFFERS GLIMPSE OF 500-MILLION-YEAR-OLD SEA WORM NAMED AFTER ‘DUNE’MONSTER http://today.ku.edu/2023/08/03/paper-offers-glimpse-500-million-year-old-sea-worm-named-after-dune-monster元論文
Annelids from the Cambrian (Wuliuan Stage, Miaolingian) Spence Shale Lagerstätte of northern Utah, USA https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08912963.2023.2196685