- 週間ランキング
調査の結果、骨の持ち主は約4100万〜3300万年前に存在したバシロサウルス科の一種と特定されています。
バシロサウルスは絶滅した原始クジラの一群ですが、現代のクジラとは違って遊泳能力に乏しく、温暖で浅い沿岸域に分布していました。
その中でP. コロッサスは既知のどのバシロサウルスよりも巨大で骨密度が高く、それぞれの骨に相当の重量があったようです。
そこでチームは発見された骨と近縁種のバシロサウルス化石をもとに骨格の全体像を復元し、さらに現生の海洋哺乳類から得られている骨格質量に対する軟部組織(筋肉や脂肪)の比率データを使って、推定されるサイズと体重を算出しました。
すると、P. コロッサスは全長約20メートル、体重は最低値で85トン、最大値だと340トンに達することが判明したのです。
サイズだけでいうとシロナガスクジラの全長24〜27メートルには及びませんが、体重は倍以上も重かった可能性があります。
これは過去に見つかっている生物の中で最も重い体重です。
恐竜なども非常に巨大で重いイメージはありますが、全長30メートルに達したとされるアルゼンチノサウルスでも体重は100トンほどです。
一方で、P. コロッサスの外観はシロナガスクジラのようにスタイリッシュではなく、かなり奇妙なものであることが分かりました。
骨格から全体像を復元してみると、P. コロッサスは胴体が大きく膨れ上がっているのに反し、頭と手足が異常に小さかったと推定されています。
チームは現代のクジラよりもマナティーやジュゴンにずっと近いと指摘しました。
生態の点でも彼らの方に似ており、マナティーやジュゴンは温暖な浅い水域に生息し、骨の比重が重くなっています。
これは潜水をしやすくするためで、骨格が重くできていると、肺から少しの空気を抜くだけで簡単に沈むことができるのです。
P. コロッサスも同じように骨の重さを利用して潜水し、海底の餌を食べていた可能性があります。
アムソン氏は「P. コロッサスはおそらく、浅瀬にたむろするのろまなダイバーだったでしょう」と指摘。
「歯の化石がないので何を食べていたかは分かりませんが、食料を得るために多くのエネルギーは費やさず、ほとんどの時間を海底で過ごしたと考えられる」と述べています。
このぷよぷよボディでは獲物の狩りをするのも一苦労だったでしょうから、マナティーやジュゴンのように海草を主食としていたのかもしれません。
研究者らは今回の発見について、地球史上最も重い生物がどんな姿をしていたかの謎を解くだけでなく、クジラの巨大化に関する理解を刷新すると考えています。
これまでの研究では、シロナガスクジラなどに見られるクジラ類の巨大化は比較的最近の出来事であり、過去1000万年以内に起こったと目されていました。
しかしP. コロッサスの存在は、クジラ類の巨大化が約4000万年前にはすでに実現していたことを示唆しています。
今回の発見により現時点における地球史上もっとも重い生物はP. コロッサスとなりましたが、今後この記録を塗り替える生物は現れるのでしょうか?
参考文献
New early whale is possibly the heaviest animal of all time https://www.naturkundemuseum-bw.de/en/press/detailansicht/new-early-whale-is-possibly-the-heaviest-animal-of-all-time This colossal extinct whale was the heaviest animal to ever live https://www.livescience.com/animals/whales/this-colossal-extinct-whale-was-the-heaviest-animal-to-ever-live Could this ancient whale be the heaviest animal ever? https://www.nature.com/articles/d41586-023-02457-0?utm_medium=affiliate&utm_source=commission_junction&utm_campaign=CONR_PF018_ECOM_GL_PHSS_ALWYS_DEEPLINK&utm_content=textlink&utm_term=PID100052172&CJEVENT=92c7869e319211ee822152de0a1eba24元論文
A heavyweight early whale pushes the boundaries of vertebrate morphology https://www.nature.com/articles/s41586-023-06381-1