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ポリプは見つかっているものの、同時代の遊泳クラゲの化石が発見されていないため、クラゲの進化史は未解明のままでした。
以前に米ユタ州で5億年前のクラゲ化石の発見が報告されていましたが、のちの研究で、クラゲとは別の近縁種である「有櫛動物(ゆうしつどうぶつ、クシクラゲ類)」であると訂正されています。
それゆえ、今回のクラゲ化石の発見は非常に貴重です。
クラゲは体の95%が水分で、全身がグネグネした軟部組織のため、一般的には化石として残りません。
しかしバージェス頁岩では、海底の崖が崩壊して泥流が生じ、そこにいた生物たちが一瞬にして泥の層に埋められ、酸素の少ない状態で保存されたため、軟部組織も分解されずに今日まで残ったと考えられます。
ではその非常に珍しいクラゲの化石とはどのようなものなのでしょか?
さて、今回見つかったクラゲは体長20センチ前後で、短い触手を90本ほど持つベルのような見た目をしていました。
科学的に未記載の新種であり、新たに「バージェソメドゥーサ・ファスミフォルミス(Burgessomedusa phasmiformis)」と命名されています。
触手があることから、本種は泳いで獲物をとらえる捕食性のクラゲで、カンブリア紀としてはかなり大物の捕食者だったと推測されています。
ROMの古生物学者であるジャン=ベルナール・キャロン(Jean-Bernard Caron)氏は「カンブリア紀の食物連鎖はこれまで考えられていた以上に複雑であり、捕食はアノマロカリスのような大型動物に限られなかったことを示唆している」と指摘しました。
また新種の存在は、典型的な釣り鐘型のボディを持つ遊泳性のクラゲが5億年以上前にはすでに進化していたことを示しているとチームは指摘します。
研究主任のジョー・モイシウク(Joe Moysiuk)氏は「クラゲとその近縁種は、最も初期に進化した動物群の一つと考えられていますが、カンブリア紀の化石記録からそれを特定するのは非常に困難でした」と説明。
その上で「今回の発見はクラゲが当時の海を泳ぎ回っていたことを疑問の余地なく証明している」と述べました。
現時点の学説によると、クラゲは今日見られる動物の「門」が突如として出そろった「カンブリア爆発」の中で誕生したとされています。
B. ファスミフォルミスの発見は、クラゲの進化の時系列をより正確に理解する上で新たな基準点を与えてくれるでしょう。
参考文献
Spectacularly Preserved Jellyfish Found in 500-Million-Year-Old Rock https://www.sciencealert.com/spectacularly-preserved-jellyfish-found-in-500-million-year-old-rock 505-Million-Year-Old Jellyfish With 90 Tentacles Is Oldest Swimming Jelly In Fossil Record https://www.iflscience.com/505-million-year-old-jellyfish-with-90-tentacles-is-oldest-swimming-jelly-in-fossil-record-70079 Royal Ontario Museum Researchers Identify Oldest Known Species of Swimming Jellyfish https://www.rom.on.ca/en/about-us/newsroom/press-releases/royal-ontario-museum-researchers-identify-oldest-known-species-of元論文
A macroscopic free-swimming medusa from the middle Cambrian Burgess Shale https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2022.2490