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また記憶時に右の拳を握り,想起時に手の拳を握った場合には、思い出した単語の正答率が最も高いことも分かっています。
記憶時に右手の拳を握り,想起時に左手の拳を握った場合と何も動作をせず記憶し、想起した統制群に統計的に有意な差がなかったのは、サンプル数が少ないことが原因だと研究チームは述べています。
今回の研究結果は、記憶時と想起時の握る手によって、記憶力が変化することを示しました。
論文では、握る拳の左右によって記憶力が変化する理由として、記憶・想起時に活性化する脳の部位に関連があるのではないかと述べられています。
2003年にカナダのロットマン研究所のリザ・ハビッブ(Reza Habib)らが記憶時と想起時に関連する、脳の前頭葉の働きに非対称性があることが報告しており、HERA(Hemispheric encoding/retrieval asymmetry)理論にまとめています。
HERAモデルでは、左側の前頭葉は経験した出来事をエピソード記憶として記憶するときに、右側の前頭葉・前頭前野はエピソード記憶を思い出す時に活性化するとされています。
そして右半身は左脳が、左半身は右半身が司ることから、右の拳を握るときには左脳に神経伝達が、左の拳を握る時には右脳に神経伝達が送られます。
このように記憶時に右手を、想起時に左手を握ることで覚えた情報をよく思い出すことができるのは、手を握ることで記憶時と想起時に関連する脳部位の活性化が促進されるからだと考えられています。
今回の実験では、握る拳の左右が単語の記憶・想起を助けることを示しています。
単語以外の絵や地図などの他の情報の記憶に関して、どのような結果になるのかは定かではありません。
場所の位置関係を覚える場合を例に挙げると、空間情報は右脳に関与するとのデータが過去の研究で提出されており、記憶・想起時の握る拳の効果が変化する可能性も考えられます。
しかしHERAモデルは、どのような文脈で覚え、思い出したのかというエピソード記憶に関するモデルであるため、記憶した刺激の種類に関係なく、記憶時と想起時の脳の左右差を予測しています。
つまり、単語や絵などさまざまな情報を覚える際に、右の拳を握り、思い出す時には左の拳を握ることでより多くの情報を記憶することができる可能性を示唆しているのです。
研究チームは「今回の研究結果は、拳を握るという単純な体の動きにより、記憶力が向上する可能性があることを示唆している。今後の研究では、拳を握ることで、記憶力以外の言語能力や空間能力も改善できるかどうかが検討する」と述べています。
参考文献
Clenching right fist may give better grip on memory. https://www.eurekalert.org/news-releases/493449元論文
Getting a grip on memory: Unilateral hand clenching alters episodic recall. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3634777/