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具体的には、東アフリカ・ケニアに生息するアフリカゾウの2グループを対象に、子供から大人まで各メンバーがどんな種類の植物を食べているかを調査しました。
その結果、各メンバーの食事メニューは、ある日に一緒に採餌した家族内でも、これまで想定されていた以上に大きく異なることが判明したのです。
対象としたグループ全体からは少なく見積もっても367種類の植物が検出され、1つの糞便サンプルからは最大で137種の植物DNAが見つかりました。
さらに並行して記録していた天候データと照らし合わせると、ゾウたちは雨が降ると地上の新鮮な草を多く食べ、雨の降らない乾燥した時期には木々の枝葉などをよく食べるようになっていたのです。
つまり、野生のゾウは毎日同じものばかり食べるのではなく、好みや天候に応じて柔軟にメニューを変えていることが分かりました。
これは例えば、お父さんはビールと癖の強い塩辛を食べて、子供たちは甘口のカレーを食べるように、私たちの家庭によく見られる習慣をゾウが実践している証拠かもしれません。
さらにカーツィネル氏は、今回の結果がゾウにまつわる長年の謎への解答にもなると指摘します。
ゾウにまつわる長年の謎とは、つまり「資源が限られた環境下で、どうして餌の取り合いが起きないのか」ということです。
ゾウの家族はいつも仲睦まじく食事をしていますが、もし皆んなが同じものを食べるのであれば、餌をめぐる仁義なき争いが勃発してもおかしくありません。
しかしそうならないのは「ゾウが入手可能な餌だけでなく、個々の好みや生理学的な状態にもとづいて別々の食事をしているからだ」とカーツィネル氏は指摘しました。
先に示したように、大人のゾウは癖が強かったり、硬いものをよく食べ、子ゾウたちは柔らかく食べやすい植物をよく食べている可能性があります。
他の一例として、カーツィネル氏は「妊娠中のゾウであれば、時期や体調に応じて食欲や食べるものが他のメンバーと大きく異なる」と述べています。
家族内でも毎日の食べ物を変えることが、餌の取り合いを防ぎ、仲良く食事をする秘訣だったのかもしれません。
また今回の知見は、絶滅が危惧される野生ゾウたちの保護活動にも役立つと考えられます。
ゾウの繁殖を促進し、個体数を安定して増加させるには、餌となる植物の多様性にも気を配る必要があるのです。
「それぞれのゾウは日々の食習慣において、バラエティやちょっとしたスパイスを必要としているのでしょう」とカーツィネル氏は話しました。
参考文献
Similar to humans, elephants also vary what they eat for dinner every night https://www.brown.edu/news/2023-07-05/elephants Ele-FOODIES! Elephants vary what they eat for dinner every night – just like humans, study finds https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-12262741/Elephants-vary-eat-dinner-night-just-like-humans-study-finds.html元論文
Foraging history of individual elephants using DNA metabarcoding https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.230337