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研究チームは今回、同遺跡の発掘作業で59種類の鳥の骨1112個を発見しました。
そして無数の鳥の骨の中から計7個のフルートが見つかったのです。
うち6個は断片的なものでしたが、1つは全体が無傷な状態で保存されています。
ただし今日のフルートのような大きさはなく、小枝くらいの小さなサイズだったようです。
鳥の骨を使った笛は他の国の遺跡でも見つかっていますが、レバント(近東地域)で確認されたのは初めてとのこと。
フルートを詳しく分析したところ、年代は1万2000年以上前であり、材料にはコガモとオオバンという鳥の長骨が使用されていました。
それぞれのフルートには1~4個の穴が開いており、奏者が指で塞いでピッチを変えられるようになっています。
1万2000年も前に、指で穴を塞いだり離したりして複雑を音色が奏でられることを理解し、実用化していたのは驚くべきことです。
また見つかったフルートにはすべて、実際に使用されたことを物語る摩耗の痕が確認できました。
研究主任のタル・シモンズ(Tal Simmons)氏は「ナトゥーフ人たちは鋭く尖らせた石の刃を用いて、鳥の骨を笛型に加工したのでしょう」と述べています。
さらに研究チームは、このフルートのレプリカを作成して、どんな音色が出たのかを試してみました。
実際吹くとどんな音がしたのか、音声ファイルなどは次項で紹介します。
笛の音の周波数を記録した結果、当時のレバント地方によく存在した2種類の猛禽類、チョウゲンボウとハイタカの鳴き声に酷似していることが判明したのです。
シモンズ氏はその音を「甲高くキーキー鳴くような音」と表現しています。
実際の音声がこちらです。音量に注意して聞いてみてください。
ナトゥーフ人たちはおそらく、笛のピッチを巧みに操作して、チョウゲンボウやハイタカの抑揚のある鳴き声を再現していたのでしょう。
それに何の目的があったかは不明ですが、シモンズ氏らは「鳴き声を模倣することで鳥をおびき寄せる狩りの方法として使っていた可能性」を推測します。
また、もし本当に狩りに使われたのであれば「動物の狩猟に笛の音色が使われたことを示す最も古い証拠となる」そうです。
あるいは単に「鳥たちとのコミュニケーションや精神的な修行における儀式に使用されたのかもしれない」とも述べています。
というのもナトゥーフ文化やそれ以前のレバントの文化圏では、猛禽類の爪が貴重品として重要視された歴史があるのです。
これを儀式用の装飾品として身につけたり、猛禽類そのものが民族の「トーテム(宗教的なシンボルとなる動物)」になっていた可能性も大いにあるといいます。
シモンズ氏は「いずれにせよ今回のフルートは、ナトゥーフ文化における音楽の役割の理解を深めるための貴重な発見です」と話しました。
笛を奏でてタカを操るナトゥーフ人を想像すると、何だかファンタジックな妄想が湧いてきますね。
参考文献
VCU forensic science professor Tal Simmons, team discover 12,000-year-old flutes made from bird bones https://www.news.vcu.edu/article/2023/06/vcu-forensic-science-professor-team-discover-12000-year-old-flutes-made-from-bird-bones 12,000-Year-Old Flutes Unearthed in Israel https://www.sci.news/archaeology/natufian-flutes-11991.html元論文
Bone aerophones from Eynan-Mallaha (Israel) indicate imitation of raptor calls by the last hunter-gatherers in the Levant https://www.nature.com/articles/s41598-023-35700-9