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ところが今年2月になって、保護区の山中に設置された動体感知式のカメラがついにその姿を捉えたのです。
「白のパンダ」は2019年から大きく成長し、今ではおそらく5〜6才に達していると見られます。
さらに、続く4月にも複数のカメラに映り込み、山中を元気に闊歩する様子が確認されました。
北京大学のリー・シェン(Li Sheng)氏は「この個体は公式な記録が始まって以来、初めて記録された野生の真っ白なジャイアントパンダだ」と述べています。
実際の映像がこちらです。
Don’t miss this ultra-rare chance! An all-white panda was spotted in the Wolong National Nature Reserve in southwest China’s Sichuan Province. Watch this lovable, one-of-a-kind creature approach a female panda and her cub, who are believed to be its mother and sibling pic.twitter.com/vmJEluCtVM
— China Xinhua News (@XHNews) May 30, 2023
同保護区には約150頭のジャイアントパンダが生息していますが、幸いなことに「白のパンダ」は仲間はずれにされることなく、コロニーにすっかり馴染んでいました。
健康に問題がある様子もなく、他のパンダと活発にじゃれ合ったり、元気に木登りをしています。
また2月の映像では、母親と見られるパンダと交流する姿も見られました。
結局、映像としては合計で10数回におよぶ撮影に成功しています。
研究者によると、このパンダは先天的にメラニン色素を生合成できない遺伝子疾患である「アルビノ」とみて間違いないといいます。
その根拠の一つは目が赤いことです。
アルビノとよく混同されるものに「白変種(リューシズム)」がありますが、こちらは色素自体は作れるものの、色素の減少によって皮膚や体毛が白くなる現象を指します。
そのため遺伝的には正常であり、目の色も他の通常個体と変わりません。
しかしアルビノでは、目を含む体全体の色素が生まれつき作れないので、奥の血管が透けて見えて赤目に見えるのです。
これがアルビノと白変種を見分ける際の大きなポイントだといいます。
一方で、アルビノ個体は他の仲間と違い、野生下で生き抜くことが困難です。
一番はやはり純白の体が目立ってしまうので身を隠すことが難しく、天敵に見つかりやすくなります。
それからメラニン色素は、虹彩や網膜、視神経の発達を助ける働きがあるので、アルビノ個体は視力が悪くなりやすいです。
加えて、メラニンは日光から皮膚を守る働きがあり、それが不足していると皮膚がんの一種である「メラノーマ(悪性黒色腫)」を発症するリスクも高まるのです。
そのせいで、日光浴をよくする動物にとってはアルビノこそが死の原因になることもあります。
「白のパンダ」は今のところ健康状態に異常がなく、仲間ともうまくやれているようなので、アルビノであることのデメリットをあまり受けていないようです。
それでも研究者らは、この貴重なパンダを保護するためにもより多くの映像を撮影しながら、DNA検査も進めていきたいと述べています。
参考文献
Unique Albino Panda Spotted in China, Sans Eye Mask https://www.sciencealert.com/unique-albino-panda-spotted-in-china-sans-eye-mask One-of-a-Kind Albino Panda Spotted in China https://www.newsweek.com/only-albino-panda-china-video-1803614 Movements of rare albino giant panda spotted in Chinese nature reserve https://www.abc.net.au/news/2023-06-01/albino-panda-camera-china-footage-wolong/102419766