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現代なら似たようなゲーム体験をVRで実現することが可能です。
ただVRによる体験は視覚的なものであり、VRの映像に合わせて体を動かしたとしても同じような感覚が得られるわけではありません。
最近では、こうした没入感をさらに高めるデバイスが開発されていますが、大掛かりなものが多く手軽に体験することはできません。
そこでアメリカのシカゴ大学(University of Chicago)に所属するロマン・ニス氏ら研究チームは、VRで高くジャンプする感覚を与えてくれるバックパックを開発しました。
これは背負うだけのシンプルなデバイスでありながら、ジャンプの動きに合わあせて背負った重りが上下することで、まるでマリオやプロバスケットボール選手のようなスーパージャンプを体感させてくれるといいます。
研究の詳細は、2023年4月23~28日に開催された人間とコンピュータの相互作用に関する国際会議「CHI 2023」にて発表されました。
目次
VRゲームの没入感を高める方法の1つは、外部装置を用いたユーザーへの刺激の追加です。
例えば、ゲーム内の出来事と同期させてファンで風を送ったり、電気刺激を与えたりするなら、プレイヤーはゲームの出来事をまるで現実のように体感できます。
また可動式シートに座って体全体を動かす方法もあります。
ところが、これらのデバイスには制限があります。
没入体験を生み出すために大掛かりな設備が必要になってしまうのです。
ゲーム内の「スーパージャンプ」の感覚を現実でも得たいなら、ワイヤーとウインチでプレイヤーを実際に吊り上げたり降ろしたりしなければいけません。
ゲームセンターなどの専用の施設であれば導入できるかもしれませんが、個人が入手するのは難しいでしょう。
また施設でVRゲームをすると、プレイヤーの気が散ってしまい、没入感を妨げるというデメリットもあります。
つまり、VRゲーマーたちが必要としているのは、家の中でも気軽に使用できる安価な刺激追加デバイスなのです。
そこでニス氏ら研究チームは、高いジャンプ感覚が簡単に得られるバックパック「ジャンプモッド(JumpMod)」を開発しました。
ジャンプモッドは、通常のバックパック(リュックサック)と同じように背負うだけで使用できます。
そしてユーザーのジャンプに反応して、背面のおもり兼バッテリー(2kg)がモーターで瞬時に上下に動くようになっています。
このおもりが移動したときの負荷が、ユーザーに高いジャンプや落下の感覚を与えてくれるのです。
例えば、プレイヤーがゲーム内に対応して少しジャンプすると、おもりが上に移動し、高くジャンプしているように感じさせることができます。
またゲーム内でプレイヤーが着地する際、おもりを上から下に移動させることで、まるで高いところから飛び降りたような「強烈な着地」を体感させてくれます。
おもりの移動タイミングを調整することで、ジャンプの高さや着地の衝撃を自由に調整できるのです。
テストゲームでは、プレイヤーが障害物を強力なジャンプで飛び越えたり、ジャンプの後にカボチャを踏みつぶしたりしました。
またゲーム内のトランポリンを使って高くジャンプし、天井の鍵を入手するというミッションにもチャレンジしました。
どれも現実以上の「仮想のスーパージャンプ」ですが、テスト中のプレイヤーは、まるで自分が本当に高く飛んでいるように感じました。
さらにジャンプモッドを使用した場合と使用しない場合の比較実験においても、ジャンプモッドがプレイヤーの感覚を有意に高めることが分かりました。
ちなみに、この没入感を実現させるためには、デバイスがユーザーのジャンプを正確に検知し、即座に対応することが重要です。
この点ジャンプモッドは、ジャンプ検出アルゴリズムがユーザーのジャンプの4つの段階(ジャンプする瞬間、上昇中、下降中、着地)を検出してくれますが、十数人が参加した正確性を確かめるテストでは、すべての段階を94%の精度で検出できました。
この高い検出精度のおかげで、違和感のないジャンプ感覚が得られるのです。
現在、研究チームはジャンプモッドの改良を目指しています。
近い将来、VRゲームを楽しむ誰もが、マリオやソニック、忍者、バスケットボール選手、高跳び選手のように高くジャンプし、特別な爽快感を楽しむことでしょう。
参考文献
This Is a Slam Dunk元論文
JumpMod: Haptic Backpack that Modifies Users’ Perceived Jump