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薄い透明な氷に覆われた路面は濡れただけの路面と見分けることが難しく、速度を落とすことなく突入した結果、多くの車がスリップしてしまうのです。
こうした路面凍結の解決策として、長年、融雪剤が使用されてきました。
融雪剤には、塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの塩化物が利用されており、路面に散布することで水の融点を数十度も低下させる効果があります。
これにより路面に雪が積もったり、凍結するのを防いでいるのです。
ところが散布された塩化物は、自動車を錆びさせたり、植物の生育を妨げたりします。
またこれらが淡水湖に流入することで、水質や水生生物に悪影響が及ぶこともあります。
もちろん融雪剤を使用せずに、砂を大量に散布したり、路面を加熱したりする方法もありますが、いずれにしても環境に悪影響を与えたり、ランニングコストが高くついたりします、
近年では、定期的に融雪剤を散布しなくて済むように「塩化物を練りこんだアスファルト」が開発されています。
しかし効果継続期間は1~3年だと言われており、あまり長く持ちません。
そこでチュウ氏ら研究チームは、環境や自動車に優しく、しかも長持ちする融雪方法を開発することにしました。
研究チームはまず、主な成分として塩化ナトリウムや塩化カルシウムの代わりに、酢酸ナトリウムを使用することにしました。
これは融雪剤として機能しますが、塩化物ではないため、環境や自動車に被害を与えないのです。
そして調整された酢酸ナトリウムを界面活性剤、二酸化ケイ素、重炭酸ナトリウム、高炉スラグ(銑鉄を製造する際に出る廃棄物)と組み合わせて粉末状にし、マイクロカプセルに入れました。
最後に、これを添加剤としてアスファルトに混ぜることで、路面凍結を防ぐ新しいアスファルトが完成しました。
実験では、このアスファルトが水の融点を0℃から-21℃まで低下させてくれました。
また研究チームによると、厚さ5cmの層が、7~8年間融雪成分を放出し続け、凍結を防止してくれるとのこと。
さらに高速道路での比較テストでは、従来の舗装で除雪作業が必要なケースでも、新しいアスファルトではその必要がないほど雪を溶かしてくれると分かりました。
まさに、環境や自動車に優しく、長持ちする新しいアスファルト添加剤なのです。
冬場の事故や立ち往生を減らすためにも、早期の実用化が期待されます。
参考文献
Keeping drivers safe with a road that can melt snow, ice on its own https://www.acs.org/pressroom/presspacs/2023/february/keeping-drivers-safe-with-a-road-that-can-melt-snow-ice-on-its-own.html Asphalt additive could continuously keep roads ice-free https://newatlas.com/materials/asphalt-salt-additive-ice-roads/元論文
Preparation of a Green Sustained-Release Microcapsule-Type Anti-Icing Agent for Asphalt Pavement and Its Application Demonstration Project https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acsomega.2c07212