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そこで研究チームは今回、SAD患者の安全行動がコミュニケーション相手からどのように認識され、どんな評価につながるかを調べることにしました。
実験では、カナダの大学から40名(平均18.6歳)に「非SADグループ」として、現にSADと診断されている患者29名(平均35.5歳)に「SADグループ」として協力してもらいました。
また、これらの参加者と会話をしてもらう実験側の協力者として、8名の女性に参加してもらっています。
まず参加者たちには「社会不安症」や「安全行動」のレベルを測定するために、8名の協力者たちも同席する部屋でアンケートの記入をしてもらいました。(女性たちも一参加者として、アンケートに記入しているフリをします)
アンケートが終了すると、参加者は8名の女性のうちの誰かとペアを組んで、会話するよう求められました。
このタスクでは「会話パートナーに自分について少し話してください」と指示されます。
会話タスクの終了後、参加者には再度、「安全行動の使用頻度」や「自分自身の信頼度(自分が他者にとってどれだけ信頼できる人間か)」を評価するアンケートに答えてもらいました。
8名の協力者には別室にて、会話をした参加者にどれだけ好感を抱いたか、どれほど信頼できる人物と思ったかについてアンケートに答えてもらっています。
これらのデータを分析した結果、SADの参加者は非SADの参加者に比べて、安全行動の使用頻度が顕著に高いことが分かりました。
そして非SADの参加者に比べて、SADの人々は8名の協力者による好感度と信頼度の評価が有意に低いことが判明したのです。
加えて、SADグループは非SADより、自分自身を「信頼性が低い」と認識する傾向が強いことも明らかになりました。
以上の結果から、研究主任のグリシュマ・ダバス(Grishma Dabas)氏は「SADの人々が信頼性に欠け、不誠実だと認識されやすい原因は、安全行動の使用頻度が高いことにある」と述べています。
安全行動によって嫌われることは回避できても、相手に好感を与えることはできず、結果として距離を縮めたり、交流を深めることはできないのかもしれません。
一方でチームは、今回の実験プロセスについて、SADと非SADグループで年齢差が大きいこと、協力者(女性)との会話で性別が一致しないこともあったため、それにより不安感が増した可能性など、いくつかの限界があることも認めています。
チームは今後、この問題点を解消した実験を行い、SADと安全行動に関する理解を深めていく予定です。
今回の研究は社会不安障害(SAD)を持つ人々を対象に行われたものですが、人から嫌われないように無難なコミュニケーションを選択することは誰にでも少なからず起きることです。
自分をさらけ出すことを恐れていては、真に良好な人間関係は築けないのかもしれません。
参考文献
People with social anxiety tend to engage in restrictive “safety behaviors” that make them less likable, study finds https://www.psypost.org/2023/02/people-with-social-anxiety-tend-to-engage-in-restrictive-safety-behaviors-that-make-them-less-likable-study-finds-67947元論文
The impact of particular safety behaviours on perceived likeability and authenticity during interpersonal interactions in social anxiety disorder https://www.cambridge.org/core/journals/behavioural-and-cognitive-psychotherapy/article/abs/impact-of-particular-safety-behaviours-on-perceived-likeability-and-authenticity-during-interpersonal-interactions-in-social-anxiety-disorder/DF904C2C3D6971111045C3C620C2C53B