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しかしこれは古代エジプト人が避妊の方法を知らなかったことを意味しません。
ツタンカーメンの治世から遡ること500年前。
BC1825年頃のものとされる「カフーン婦人科パピルス(Kahun Gynaecological Papyrus)」には、ワニの糞と他の物質(詳細は不明だがハチミツとの説が有力)を混ぜたものを避妊薬として使うことが記されています。
具体的には、この混合物を女性の子宮頸部まで押し込むことで、精子の侵入を防いだというのです。
この方法は「物理的に精子をガードした」という説の他に、「ワニの糞が膣内のpHを変化させて殺精子剤として機能した」という説があります。
妊娠を防ぐ前に、ワニの糞のせいで病気になりそうですが、少なくともこの事実は古い時代の人々が膣内への精子の侵入を防げば避妊が可能であると知っていたことを示しています。
コンドームを最初に発明したのは古代エジプト人と見られますが、他の文明もそれにすぐ追随し、あらゆる避妊法を編み出しました。
その奇妙なコンドームの数々を見てみましょう。
例えば、古代ローマではヤギやヒツジのような動物の腸および膀胱を使って、男性器を包んでいたことがわかっています。
リアルにウィンナーを作るときのように、半透明の薄い腸に自らの男性器を挿入していたのです。
また古代中国では、シルクペーパーに油を染み込ませてコンドームを作ったり、あるいは女性が性行為の前に水銀を一飲みすることで妊娠が防げるという誤った風習が広まっていました。
それから中世の日本では、カメの甲羅を整形して男性器の先端に装着し、避妊具にしていたという。
なんとも痛々しい…
その後、16世紀半ばに入ると、「避妊」と「感染症予防」の両方を目的とした、現代に近いコンドームが誕生します。
これは当時のヨーロッパで、梅毒という性感染症が流行したことがきっかけで、薬液に浸した鞘状リネンのコンドームが作られました。
そして19世紀初め、ゴム生産の確立により、コンドーム開発も今までとは比べ物にならないほど大きく飛躍します。
アメリカの発明家であるチャールズ・グッドイヤー(Charles Goodyear、1800〜1860)が、生ゴムに硫黄を混ぜて熱を加え、用途に合わせた弾力を発揮するゴムの加工法を確立。
この加工法をもとに、1850年には複数のゴム会社が新しいコンドームを大量生産し、一挙に世界に広まることとなりました。
まさかコンドームがツタンカーメンの時代から使われているとは思いもしなかったでしょうが、避妊具の発明にも、試行錯誤の長い歴史があるのです。
参考文献
Tutankhamun Used Condoms Made from Oil-Soaked Linen
https://www.ancient-origins.net/weird-facts/tutankhamun-condom-0017004
Ancient Methods of Contraception – Even Tutankhamun Wore Protection
https://www.ancient-origins.net/history-ancient-traditions/ancient-methods-contraception-even-tutankhamun-wore-protection-009205
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: 大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。