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全国の路線バス事業者やモビリティサービス企業をはじめ、地方自治体、観光ビューロー、教育事業者などが注目する埼玉工業大学(埼玉県深谷市)の自動運転AIバスは、企業の視察・試乗会・勉強会としても各方面から打診があるという。
11月初旬には、トラック用リヤーボデーの設計開発・製造・販売などを手がける東洋ボデー(東京都武蔵村山市)とその協力会社などが、「自動運転視察ツアー」と題した埼玉工業大学 自動運転AIバス試乗会を埼玉県深谷市で実施し、その“オートな走り”を実感した。
埼玉工業大学が手がける自動運転AIバスは、既存の路線バス車両に自動運転AIシステムを後付け(搭載・改造)することで、自動化を実現させる点で、「自動運転バスの新車を導入するよりも現実的」と、全国の路線バス事業者が注目している。
また、埼玉県先端産業創造プロジェクトのスマートモビリティ実証補助に 2年連続、また令和 3年度埼玉県デジタル技術活用製品開発費補助などに採択されている埼玉工業大学の自動運転AIバスは、“社会実装している教材”としてもその存在感を高めている。
たとえば、画像の中型路線バス車両は、既存の日野 レインボーII に埼玉工業大学が開発した後付け自動運転AIシステムを搭載し、全国各地の実証実験テスト走行を経て、自動運転AI や アルゴリズムなどをアップデートしてきた。
いっぽう、埼玉工業大学の自動運転AIバスは、普段は埼玉工業大学と、最寄り駅の高崎線 岡部駅を結ぶスクールバス(学バス)として自動で地元を走り、社会実装へ向けて着々と進化させている。
地元 深谷市出身 渋沢栄一を主人公にした NHK大河ドラマ「青天を衝け」がオンエアされていたころは、「渋沢栄一 論語の里 循環バス」として、緑ナンバー(一般貨物自動車運送事業許可)を取得し、営業最長26kmを自動運転レベル2で営業運転するなど、実績も積んできた。
今回の東洋ボデー「自動運転視察ツアー」は、埼玉工業大学 自動運転AIバス開発を率いる 工学部 情報システム学科 渡部大志 教授 副学長(研究・国際交流担当)自動運転技術開発センター長が、開発の最新トレンドや今後の自動化へのビジョンなどを参加者たちに伝える座学・質疑・交流、試乗会発着地の深谷市渋沢栄一記念館(八基公民館)の見学、そして深谷市内の自然豊かな道をオートで走る自動運転バス試乗会という3部構成で実施。
東洋ボデー中條守康 代表取締役会長、中条充啓 代表取締役社長をはじめ、40人ほどが自動運転AIバスの“いま”を体感した。
実際に埼玉工業大学 自動運転AIバスに乗ってみると、毎回その進化を感じさせてくれる。
出発時や、信号機のない交差点にさしかかると、「前方よし、右よし、左よし」と運転手が指差し呼称し、ハンドルもアクセル・ブレーキペダルも触らず、オートでスムーズに走っていく。
片側1車線の道幅が狭い道路でも、大型トラックとのすれ違いも一定の距離を確保し、臆することなく走っていく。ちょっと前までは、自動でブレーキが入るなどの挙動がみられたが、いまはもうない。
東洋ボデー「自動運転視察ツアー」試乗後、同社 中條守康 代表取締役会長、中条充啓 代表取締役社長たちは、こんな印象を伝えていた。
「たいへん勉強になりました。道交法や各種規則のなかで、自動運転がどう進んでいくかという方向性が、乗って体感できました」
「加速やブレーキも人が運転しているかのように、自然な乗り心地でした。超高齢化社会・人材不足のなかで、こうした自動運転バスの社会実装を期待したい」
「トラックとのすれ違いなど、ぎりぎりでもしっかり確実に走っていくところなどは、心強いと感じました」
「こういう見学会・試乗会があることを広く知られてないのがもったいないですよね。もっと産官学で連携して、こうした試乗会・体験会を広めて、実現へのイメージを高めていけば、社会実装も加速するでしょう」
埼玉工業大学は、東洋ボデーのような自動車関連企業やモビリティサービス事業者、路線バス事業者、地方自治体、観光事業者、大学・学校などを対象に、こうした自動運転AIシステムの見学会・試乗会などを積極的に受け入れている。
「自動運転AIシステムや、実際にオートで走行する自動運転AIバスの試乗・体験機会を増やすことで、新たなアイデアの創出や、連携によるシナジー、パートナーシップなどが生み出されると思っています。
今後も、幅広い業種・業態の人たちに、この自動運転AIバスの貢献度、活躍できる場、無限の可能性を体感してほしいとも思っています」(渡部大志 教授)
―――そんな埼玉工業大学は、こうした自動運転AIシステム開発のルーツとなる同大学 情報システム学科に、AI専攻 に続き、2025年4月から自動運転技術専攻が始動する。
全国各地の実証実験を経て、さらに進化・深度化していく埼玉工業大学の自動運転AIシステムに、注目だ。